ビジネスとNGO/NPOの連携に向けたファーストステップ

2021 / 10 / 4 | カテゴリー: | 執筆者:岡山 奈央 Nao Okayama

Image by Gerd Altmann from Pixabay

 

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン様からのご依頼を受け、エコネットワークスで調査、報告書の取りまとめをさせていただいたプロジェクト。その一環で、ある企業様からお問合せをいただきました。

“自社として環境・サステナビリティに取り組む上で、適切な方向に進んでいるか、社会の期待を適切に踏まえているかを理解したく、専門的な知見を持つNGO/NPOと対話していきたい。”

今回は、同じようにNGO/NPOとの連携を考えていらっしゃる企業のご担当者の方が、その第一歩を踏み出すためのヒントになりそうなことをいくつか書き出してみようと思います。

* * *

パートナーシップ(連携)についてはSDGsのゴール17でもその重要性が掲げられています。これまでは自社以外の組織との連携があまり進んでいなかった日本国内でも、SDGsの導入により、企業による異業種、自治体との連携は以前と比べ、増えてきているようです。しかし、NGO/NPO等の非営利団体との連携については、依然としてハードルが高いと感じている企業も少なくないのではないかと思います。

特に、これまで連携が進んでいない国内の場合、「NGO/NPOと連携すると批判されそう」といった声や、「企業は利益ばかりを追求して社会課題解決を本気で考えていないのでは」といった声が聞こえてきそうです。

そもそも企業とNGO/NPOは、組織としての存在理由、立ち位置が異なります。同じサステナブルな世界を目指していたとしても、これまで異なる視点から見てきた組織である点をよく理解し、相手が期待することを見極めることがパートナーシップを成功に導くためのカギとなります。

 

そもそもパートナーシップとは、何のために実施するのか?

2020年に国連から発行されたThe SDGs Partnership Guidebookでは、マルチステークホルダー・パートナーシップについて、以下のように定義しています。

  • “An ongoing collaborative relationship between or among organisations from different stakeholder types aligning their interests around a common vision, combining their complementary resources and competencies and sharing risk, to maximise value creation towards the Sustainable Development Goals and deliver benefit to each of the partners.”(異なるステークホルダー間の協力的な関係のことで、それぞれの関心事と共通のビジョンを整合し、各々が貢献できるリソースと能力をつなげ、リスクを共有しながら、SDGs達成に向け、価値創造を最大化し、パートナー各々にとってメリットをもたらすもの。)(仮訳)

つまり、パートナーシップは、参加する全てのパートナーにとってプラスになる形であることが大前提です。とはいえ、他のパートナー組織にとってプラスになること、それぞれが相手に期待することというのは、自分たちが想定しているものとは異なるかもしれません。

 

企業とNGO/NPO、自分たちが貢献できることと相手に期待すること

企業とNGO/NPOそれぞれが有しているリソースとしては以下のようなものが挙げられるでしょう。

NGO/NPO(市民社会)
・国際的な知見、リソースへのアクセス
・技術的な専門性
・現場の状況の把握、理解
・コミュニティへのアクセス
・正当性/社会関係資本/影響力
・エンゲージメント力

企業
・市場を基盤とした価値創造アプローチ
・ブランド力、マーケティング力、コミュニケーション力
・顧客や従業員への直接的なアクセスと影響力
・自社の商品とサービス
・技術的な革新力
・バリューチェーンへの直接的な影響力
・インフラ/物流
・データ
・財政的、および現物(物品)による貢献

企業はNGO/NPOに対して、また、NGO/NPOは企業に対してどのような貢献ができるのか、そして、自組織に不足している点についてどのように貢献してもらう必要があるのか、といった点をまずは見極める必要があります。その上で、欠けている点を補い合うだけでなく、複数の組織のリソースやキャパシティを掛け合わせることにより、新たな価値を創造することができるアプローチを探していくことになります。

より詳しく見ていくと、企業がNGO/NPOに期待する「専門性」についても、特定の分野における高い専門的なインプットが必要な場合、また、より広く社員の啓発につながるインプットが必要な場合とでは、アプローチが異なるでしょう。このように、連携のパターンや深さはさまざまであることから、その目的を明確にした上で対話を始める必要があります。

 

対話を進める際に配慮する点

また、対話を始める際には、双方が安心して対話に臨めることも重要です。双方が事前の準備をしっかりすることはもちろんのことですが、これまで全く接点がなかった組織同士である場合は、コーディネーター、進行役を間に挟む必要があるケースもあるでしょう。加えて、せっかく対話に取り組むのですから、その内容を、ダイアログや対談のような形で社内外にコンテンツとして発信することで、自社がどのような方向性に向かっているのかを示すことができます。ステークホルダーからの理解を深めることもできますし、新たな対話の場を生み出すきっかけにもなるでしょう。

いきなり対外的に発信するというのが難しいようであれば、まずは数回小さく非公式な場を持って、お互いの感触を確かめた上で、より戦略的な対話に展開していくというアプローチも考えられます。小規模の非公式な対話の場合、NGO/NPOによっては無償で応じてくれる組織もあるかもしれません。一方で、特に日本では弱いと言われる市民社会強化の観点からも、企業はきちんと謝礼を用意するなど、敬意を示すことも良好なパートナーシップを築くための大切な視点であると感じています。

 

(岡山奈央 エコネットワークス  シニアアナリスト)

 

 

 

 

 

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