広がる「ソーラーシェアリング」 農業×太陽光発電でCO2削減へ

2021 / 9 / 7 | 執筆者:宮原 桃子 Momoko Miyahara

ソーラーシェアリングの発電所 ©市民エネルギーちば

ここ数年、田舎道を走っていると、山間や平原に巨大な太陽光発電パネルを目にすることが多くなりました。最近は、テレビで再生可能エネルギー(以下、再エネ)電力小売事業者「みんな電力」のCMが流れ、再エネが日本でも広がりつつあることを実感します。

昨年10月、日本政府はようやく「2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする」というネットゼロ目標を掲げました。温室効果ガスの8割以上を占めるエネルギー分野の脱炭素化に向け、再エネを最大限導入するとしています。2019年度の日本の再エネ比率は18%に留まっていますが、持続可能な脱炭素社会を目指す国内企業グループ「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」は、目標達成のためには、「2030年までに再エネ比率50%を目指すべき」との提言を発表しています。今多くの企業が再エネ導入に取り組んでおり、再エネの広がりは加速しています。

メガソーラーなど大規模開発に危惧の声

Image by k from Adobestock

しかし一方で、発電規模が1メガワット以上のいわゆる「メガソーラー」などの大型の太陽光発電施設について、山林開発などによる環境への影響を危惧する声も高まっています。林野庁が新聞報道などを分析した資料によると、特に土砂災害や景観に関して問題となる事例が多く、太陽光発電所の建設を規制する条例は全国で152市町村、4県に広がっています(出所:地方自治研究機構)。環境負荷が少ない開発地域を選定する「ゾーニング」が進み始めており、5月に成立した改正地球温暖化対策推進法では、ゾーニングは自治体の努力義務に位置付けられています。

これは太陽光発電に限ったことではなく、宅地開発による土砂災害などの事例も数多くあるように、山林を切り崩し、稜線の破壊や水脈の分断を引き起こす大規模開発のあり方に問題があるのです。規模が大きくなるほど、環境負荷リスクは高まると言えますが、だからと言って必ずしもメガソーラー=悪ということでなく、環境への負荷を最小限に抑える工夫や取り組みがなされているかが重要です。

全国2000カ所以上に広がる「ソーラーシェアリング」

市民エネルギーちばの発電所。太陽光パネルの下に見えるのは大豆畑 ©市民エネルギーちば

国内におけるソーラーシェアリングの先駆者とも言える「市民エネルギーちば株式会社」の発電所では、太陽光パネルは地面から3m前後の高さに設置され、細長い太陽光パネルの間には空間があり、パネルと空間が1:2の比率で設置されています。その空間から十分な量の太陽光が畑に届き、有機農産物が育てられています。太陽光発電でCO2を削減するだけでなく、農産物の光合成でもCO2を削減し、さらに耕作放棄地を耕すことによる土壌回復や、不耕起栽培などの「再生農業(リジェネラティブ・アグリカルチャー)」を行うことで、より多くの炭素を土壌に固定化・貯留することで、CO2を大気から吸収することができるのです。

動画:市民エネルギーちばのソーラーシェアリングについて

同社は、設備容量が1.2メガワットの「匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所(千葉県匝瑳市)」を含め、16カ所にソーラーシェアリング施設を開設しています。ソーラーシェアリングを起点とした地域おこしを目指し、地元農家には耕作協力金という収入が生まれるほか、農産物の加工による特産品開発、農村体験・農泊・イベントなどの観光事業など、活動は多岐に渡っています。サステナビリティ先進企業である「パタゴニア」日本支社も、同社電力を採用しています。

最近では、みんな電力も、太陽光パネルの下で原木シイタケ栽培を行う「原木シイタケ太陽光発電所」(岡山県玉野市)の稼働を開始し、光が入りにくい環境を活かした作物栽培により、発電と農業の最適化に取り組んでいます。また、ファッションブランドの「ロンハーマン」も、前述の市民エネルギーちばの協力のもと、ソーラーシェアリング施設を稼働させると発表しています。

みんな電力「原木シイタケ太陽光発電所」©みんな電力

現在ソーラーシェアリング施設は、全国2000カ所以上に広がっていると言われています。農林水産省も、荒廃農地の転用許可要件を4月に緩和し、「みどりの食料システム戦略」には、ソーラーシェアリングも一施策として盛り込まれるなど、動きが活発になっています。

まずは省エネ、そして「再エネの質」を見極めて選ぶ時代へ

環境への影響を抑えるために、企業や私たち一人ひとりに今何よりも求められているのは、省エネです。その上で、再エネの導入にあたっても「再エネの質」を精査する動きが、先進企業では始まっています。3月に、2030年までに再エネ比率を50%にする目標を掲げたリコーは、独自の再エネ電力総合評価制度を発表。再エネ調達にあたり、再エネ設備の新規開発を促す「追加性」があること、環境負荷がより低いこと、地域社会が出資する発電所であることなど総合的に評価して、より良い再エネを調達する取り組みを進めています。

再エネに関しては、その他にも太陽光パネルの廃棄物リサイクルの課題や、バイオマス発電の主に輸入燃料に関わる森林伐採や輸送によるCO2排出などの問題も指摘されています。どのような活動も環境負荷がゼロということはありえない中で、再エネに関しても、環境リスクとともに、これを最小限にする取り組みが行われているかどうかを見極め、よりクリーンなエネルギーを選んでいくことが、今後ますます求められていくのではないでしょうか。

宮原桃子/ライター)

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