コロナ後もリモートワークはジェンダー平等を遠ざけるのか

2021 / 7 / 26 | 執筆者:近藤 圭子 Keiko Kondo

パソコンとヘッドホン

リモートワークはジェンダー役割を固定化する?

2019年に「リモートワークはジェンダー平等を遠ざけるのか」と題した記事を書きました。

かつてよく見られたリモートワークの制度は、育児や介護などの理由がある方が申請の上で利用できるものでした。しかし、リモートワークを女性だけが利用する場合、「育児や家事、介護といったケア労働は女性がするもの」とするジェンダー役割を固定化しかねません。

その後、世界はコロナ禍へ。リモートワークの全盛時代となりました。

「リモートワークが進めば、女性が働く選択肢が増える」、「女性が管理職にチャレンジしやすくなる」。そんな意見を聞いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、リモートワークを半ば強制的に取り入れざるを得ない状況で、「それでも仕事は回る」経験を持ち、恒常的な制度として取り入れた会社は少なくありません。

出社制限が解かれた会社に戻るのは誰か

それではこの先、新型コロナの流行が落ち着いて出社しやすくなったとき、何が起きるのか。今年6月、英ガーディアン紙に興味深い記事が掲載されています。

Switch to more home working after Covid ‘will make gender inequality worse’

出社制限が解かれ、在宅か出社かを選べるようになったとき、ジェンダー格差はさらに広がるというのです。

というのは、ケアを担う人は家で働く傾向が、そうでない人はオフィスに向かう傾向があるからです。オフィスにいる人の姿はマネジャーに見えやすくなる一方で、いない人の姿は見えにくく、評価に差が出ると記事は指摘します。

記事に登場する専門家は、男性のリモートワークの推進がポイントだと言います。「在宅勤務を経験したと言っても、パンデミックを経て、男性にとって『家族』の優先順位は上がったか?」と。

日本では今年行われた内閣府の調査に、家事や育児の分担が感染拡大前と比べて変化したかを尋ねる設問がありました。「夫の役割が増加した」「やや増加した」は、「通常の働き方をしている夫の回答」が約16%なのに対し、「テレワークを実施している夫の回答」では約37%と倍以上になっていて、リモートワークによって家事・育児に一層関わるようになった男性の存在を示しています。新型コロナの流行が落ち着いて出社しやすくなったとき、この層が従来型の働き方に戻って家事・育児の役割を減らすのか。それともリモートワークを続けて家事・育児を妻と分け合うのか。ひとつの分かれ道となるのでしょう。

新たな時代の柔軟な制度設計と評価軸を

最後に記しておきたいのは、リモートワークの理由を制限する必要はあるのかという点です。もちろん、対面の交流が生み出す価値の存在には頷きますし、リモートワークが難しい職種が社会を支えていることも理解しています。ただ、時間や場所が柔軟な働き方がメリットになる方は意外と多いのです。ここでは夫婦間の家事・育児分担に焦点を当てましたが、ひとり親で育児も仕事も担う方もいれば、発達障害があって大勢の職場より落ち着ける環境を好む方、不妊治療で急な通院が必要な方、うつ病からの回復期で通勤の負担を減らしたい方、夜間の社会人大学に行くために移動時間を減らしたい方もいるでしょう。その理由を網羅して事前に想定するのは困難で、「○○のための制度」と銘打つとこぼれ落ちる方が出てきます。一人ひとりの権利を大切にしたい時代に、多様な事情に沿える柔軟な制度設計、そして分散した働き方を前提とした新しい評価軸が求められているのではないでしょうか。

(近藤 圭子)

Image by Esa Niemelä from Pixabay

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