「先住民族にも公正な利益を」 化粧品メーカーの取り組み

2021 / 7 / 5 | 執筆者:mihosoga

古来からの薬を手に取る先住民族の手元

私は、執筆を通じて先住民族の文化の魅力を伝えることを、活動テーマの1つにしています(詳しくはこちら)。その中で、企業のものづくりの過程で、先住民族が供給する原料や知恵の権利が、驚くほど安い価格で取引されてきたという事実を知りました。そこで今回は、こうした問題の背景、解決策を模索する化粧品メーカーの取り組みをお伝えします。

ないがしろにされてきた、先住民族の権利

ジャガイモや、化粧品でよく使われるホホバ。抗マラリア薬のキニーネや強心剤のジギタリス。これらはいずれも、先住民族が栽培したり自然から採取したりして利用してきた植物やその成分が元になっています。

世界の先住民族は、何が薬草として使えるか、どのように利用すればいいかといった知恵を先祖代々受け継ぎ、病気の治療や儀式のためのお化粧などに利用してきました。

医薬品、食品、化粧品関連のメーカーは、先住民族が持つそうした知識に注目し、積極的に先住民族に接触し、製品開発をしてきました。しかし、作り上げた製品の利益を分け合うケースは稀で、企業だけで莫大な利益を独占してきました。この問題は、生物資源の海賊行為を意味する造語「バイオパイラシー(biopiracy)」という言葉で呼ばれています。インドの科学者で環境活動家のヴァンダナ・シヴァさんが訴え、世界中に広まりました。

こうした動きを受け、国連は1992年に採択された生物多様性条約の中で、生物資源とそこに含まれる伝統的知識に高い経済的価値があることを認めました。さらに2010年に締結された生物多様性条約の名古屋議定書では、生物資源や伝統的知識の開発で得られた利益の配分方法を規定しています。しかし、先住民族の伝統的な知識の扱いについては依然、十分に保護されているとは言い難いのが現状です。

フェアな関係で製品開発をおこなう化粧品メーカー

こうした中、人権保護の観点から先住民族と公正な取引をしている企業もあります。今回は化粧品メーカーの事例を3つ、お伝えします。

1つ目は、環境保全の模範となる企業を目指している化粧品メーカーAVEDA(アヴェダ)です。アヴェダは1990年代にブラジル・アマゾン奥地に住むヤワナワ族の族長と交渉し、彼らが森で採っていた鮮やかな朱色の染料ウルク(アナトー)を、伝統的な農法で生産してもらうことにしました。その道のりは平坦ではありませんでしたが、2000年代からは安定的な生産が実現。アヴェダの様々な製品に使われるようになり、報酬がヤワナワ族の伝統文化の再建と強化につながっています(詳しくはこちら)。

2つ目は、英国の自然派コスメのメーカーLUSH(ラッシュ)です。ラッシュは「エシカルバイイングポリシー」の中で、労働者の人権について「公平な賃金、労働時間、差別および児童労働を許していない」と明記しています。先住民族との取引でもこのポリシーを遵守。ブラジルのアマゾンの先住民族からトンカ豆を買う際は、仲介人を入れず直接、買い取っています。この取引は人々に現金収入をもたらし、森で伝統的な生活を続ける支えになっています。

先住民族自身による取り組みもあります。オーストラリアの先住民族が立ち上げたThe Bush Balm® social enterprise(ブッシュバーム社会企業)は、昔から使ってきた野生の薬草、ミツロウなどを原料にスキンケア製品を作って販売し、自身のコミュニティの経済的自立と文化継承につなげています。

ブッシュバームの写真

すべて自然由来の原料で作られているブッシュバーム

原料調達での人権配慮を「当たり前」に

先進的な取り組みがある一方で「化粧品は材料が多岐にわたるので、配慮するのは難しい」といった声も少なくありません。しかし、消費者からエシカルな商品を求める声が強まり、株主からもESG視点からのものづくりを求められている昨今、サプライチェーンも含んだ人権配慮の重要性は高まる一方です。

原料の調達先にも敬意を払い、双方に公正な利益をもたらす取引をおこなう。今回お伝えしたような動きが今後、より多くの企業に広がり「当たり前」になることを願ってやみません。

(曽我 美穂/ライター)

Photo by subvertivo _lab on Unsplash

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