サステナビリティ人材の確保へ 広がる企業の競争

2021 / 5 / 27 | カテゴリー: | 執筆者:宮原 桃子 Momoko Miyahara

「サステナビリティへの機運がものすごい勢いで高まり、取り組むべきことも急増し、対応するマンパワーが足りない…!」こんなため息が、日々さまざまなクライアント企業のCSR関連部署から聞こえています。

欧米から遅れを取りつつも、日本でも2015年にSDGsが採択された頃から、社会の中でのサステナビリティへの関心は急激に高まっています。多くの企業が、その存在意義やブランド価値をかけて必死にサステナビリティに取り組んでいる中、サステナビリティ分野の知見とビジネス視点を持った人材が求められているのです。企業の人材獲得合戦も、グローバルにさまざまな形で展開されています。

  • 学術機関との提携

この4月にシャネルは、英ケンブリッジ大学のサステナビリティ・リーダーシップ研究所(CISL)と3年間の提携を発表し、サステナビリティ領域での事業開発とともに、人材育成・獲得への取り組みを強化しています。シャネルの幹部や主要な実務担当者向けに、CISLがサステナビリティ関連の人材育成プログラムを開発・提供する一方、シャネルはCISL大学院生に対して同助成金やサポートを提供し、将来のリーダー人材育成を支援するというものです。

またグーグルも4月に、イスラエルのテルアビブ大学と「AI for Social Good」という3年間の提携プログラムを開始し、社会課題解決に向けたAI研究の中から選抜されたプロジェクトへの支援を行っています。専門的な学術機関との連携は、自社の事業開発とともに、将来的に有望な人材獲得への狙いもあると見られます。

  • 学生や次世代向け企業コンペ

イノベーションを目的とした次世代向けの企業コンペも、将来人材の育成や獲得につながる機会として開催されています。昨年のマイクロソフトの学生コンペ「Imagine Cup」優勝者は、乳幼児死亡率の低下を目指したIoT活用によるリモート検診技術、ダイソンの次世代向け国際エンジニアリングアワード「ジェームスダイソンアワード」の国際優秀賞は乳がんの簡易検査ツールと、近年は企業コンペでもサステナビリティが重視される傾向にあります。ジェームスダイソンアワードでは、昨年からサステナビリティに特化した賞も創設されています。

  • インターンシップ

サステナビリティに特化したインターンシップの事例としては、ミドリムシ関連製品を手掛けるバイオベンチャーのユーグレナが、2019年から同社と地球の未来を変える業務を担う「CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)」のポジションを創設し、1年間の任期で18歳以下の人材を採用しています。CFOの他にも、「Futureサミットメンバー」として5人の中高生が同社のサステナビリティに関する戦略やアクションに取り組んでいます。

一方、学生側においても、最近では「エシカル就活」という言葉も登場し、Z世代の大学生がエシカル就活をサポートする企業「Allesgood」を設立するなど、就職先を選ぶ基準として企業のサステナビリティへの取り組みを重視する傾向は高まっています。

サステナビリティが企業活動の根幹としてますます重要視される中、将来を見据えたサステナビリティ人材の育成や獲得への動きは加速していくでしょう。いずれにせよ、教科書や授業でSDGsを学ぶ今の小学生が大人になる頃は、どの人材もサステナビリティに知見があることが当たり前になっているはずです。今の社会を担う私たち大人世代こそ、次世代に呆れられぬよう、意識の向上と行動を積み重ねていく必要があるのではないでしょうか。

宮原桃子/ライター)

 

このエントリーをはてなブックマークに追加