本業と離れた分野で社会課題に向き合うソニー。その心は?

2021 / 4 / 17 | 執筆者:mihosoga

地球の問題をまとめて解決する「協生農法」

株式会社ソニーの系列企業、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)がサポートしている研究の1つ「協生農法」が、環境・食料・健康の問題を全て解決する画期的な手段として注目されています。

「協生農法」は、同所リサーチャーの舩橋 真俊氏が提唱している、土地を耕さず、肥料や農薬も使わず、多種多様な植物を混生・密生させて豊かな生態系を作り、有用植物を生産する農法です。2015年からアフリカ・サヘル地域でおこなった実証実験では、砂漠化した土地に150種類の野菜が育つ生態系を作り上げました。現在も実用化に向けて研究を重ねています。

なぜ、ソニーが?

協生農法は、先進的で面白い取り組みですが、1つ疑問が浮かんできます。

それは、「なぜ、ソニーが?」

企業が課題を選定する際は、自社の事業内容を確認したうえで、関連するSDGs目標を考え、実現可能性が高い目標や社会貢献事業の計画を立てていく形が多いです。

そうした中で、自社の事業と離れた研究を支援する、というソニーのアプローチは異質です。「協生農法」のような研究は地道な取り組みが必要で、事業化まで相当な時間がかかります。それなのになぜ…?

事業との関連性よりも、社会課題の大きさを重視

答えのヒントは、ソニーCSLの代表取締役社長・所長である北野 宏明氏の、下記のメッセージにありました。

Research for the Future of Humanity

人類の未来のため、妄想を具現化するプラットフォーム、それがソニーCSL です。

北野氏は、日経XTECHの記事で「全然人がやってないような農法を、かなり基礎研究的なところから世の中に広がっていくまでには、やはり(時間が)かかりますよね」と述べながら、10年から15年後の成果を見据えて協生農法をサポートしている、と語っています。世の中の大きな課題の解決につながる研究であれば事業化の道筋は必ずある、という考えが基本にあるので、時間がかかる研究も躊躇せず、積極的に支援しているのです。

実際に、ソニーCSLの研究からは様々な新規事業が生まれています。独自のセンシング&AI技術を用いて様々な課題解決をおこなうクウジット株式会社は、ソニーCSLのメンバーが2007年に設立したベンチャー企業です。株式会社ソニー・グローバルエデュケーションも、ソニーCSLでおこなった活動から生まれた企業で、多くの教育機関と協業しながら、テクノロジーを活用した教育分野のイノベーションを進めています。

地球の未来を考えた取り組みを

「社会課題の大きさや可能性を大切にしたい」という想いは、ソニーCSLの他の研究領域にも表れています。まちづくりに活かすデジタルテクノロジー、宇宙での通信技術、音楽家の演奏支援…と本当に多彩です。

長期的な視点で「地球の未来」に役立つと考えられる事業をサポートする。そんな企業が増えれば、世の中は、もっと皆が生きやすい場になっていくでしょう。大胆で奇抜に見えるソニーの姿勢から、私たちは多くのことを学べそうです。

曽我 美穂/ライター)

Photo by Anna Pelzer via Unsplash

 

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