押さえておきたい サステナビリティ情報開示 統合化の動き

2021 / 3 / 1 | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

2020年9月にサステナビリティ情報開示の分野で大きな動きがありました。これまでサステナビリティ情報(非財務情報、ESG情報)の開示に関する国際的なガイドラインやフレームワークを策定してきた主要5団体が、より包括的なレポーティングに向けて協働する声明を発表したのです。

Statement of Intent to Work Together Towards Comprehensive Corporate Reporting

参加しているのは以下の5つの団体です。
・サステナビリティ情報に関するガイドラインを発行するGRI
・統合報告フレームワークを公表したIIRC
・業種別に財務へのインパクトが大きい重要課題のスタンダードを発表しているSASB
・気候変動に関する開示フレームワームに取り組むCDSB
・気候変動、水、森林に関する企業の情報開示を評価するCDP

過去20年ほどの間に様々なサステナビリティ情報開示の枠組みが登場し、多くの企業で活用されるようになってきました。一方でこうした多様な枠組みについて、それぞれの目的や位置づけ、内容への理解は必ずしも十分ではなく、一部で企業に混乱や負担をもたらしている側面があることも事実です。

包括的なレポーティングを目指す上で、重要な概念となるのが「マテリアリティ(重要課題)」です。声明では、ESG・サステナビリティの側面が企業の財務的な側面に影響を与えるとの認識の広がりに伴い、マテリアリティには、企業が社会に与える重要性の観点と、サステナビリティ課題が企業の価値創造に与える重要性の観点の大きく2つの種類があると整理されています。そして、何がマテリアリティとなるかは、徐々にまたは急速に移り替わる動的なものとして捉えるべきであるという「ダイナミック・マテリアリティ」の概念を提示しています。

  • ・一番外側が、組織が経済、環境、人々に与えるポジティブまたはネガティブな重要なインパクトに基づくサステナビリティに関する報告
  • ・真ん中が、サステナビリティ報告のうち、企業の価値創造にとって重要な報告
  • ・一番内側が、現在の財務会計制度での報告
  • ・サステナビリティ課題の重要性は、徐々に変化するものもあれば、昨今の人種的公平性や新型コロナウイルス感染症のように急速に浮上するものもある

そして、この動的なマテリアリティの概念を前提とした上で、企業に求められるのは以下の2種類のレポーティングです。

  • ・より広範なステークホルダーを対象にしたサステナビリティに関する報告(サステナビリティ・レポーティング)
  • ・主に経済的な判断を行うステークホルダーを対象にした企業の価値創造に関する報告(統合報告)

*以上の説明は声明にあるP5、P14の図とセットで見ていただくとわかりやすいです

 

また5団体による声明が発表されたのと時を同じくして、国際会計基準を発行しているIFRS財団からも、サステナビリティに関する国際基準を策定するための組織を設置し検討を進めていくという提言が発表されました。現在の企業会計の標準となっているルールを策定している、メインストリームの中心にいる組織の動向として今後注目が必要な動きと言えます。

さらにその他にも、社会へのインパクトを定量化して把握しようとする試みや、企業評価に環境・社会へのインパクトを組み込むための方法論を開発する研究プロジェクトの始動など、企業のサステナビリティ情報開示を巡っては様々な動きが加速しています。

こうした一連の流れが最終的に国際標準としての規格に収斂していくまでにはまだ長い時間がかかるでしょうが、確実に数十年後には企業が従うべきルールとなっていくはずです。企業はこうした将来の変化も見据えて、ルールができるまで受け身でただ待つのではなく、何のためにレポーティングを行うのかという前提に立ち返り、積極的に変化を先取りして対応していくことが期待されます。

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