サプライヤーのESG評価と中小企業による挑戦

近年、サステナビリティへの社会的な関心の高まりから、ESG評価機関による評価を受ける企業が国内外で増加しています。

ESG情報に関連する評価を行う評価機関には、CDP、Robeco SAM、Sustainalytics、MCSI、Viego Eiris、Oekom Research、FTSEなどさまざまであり、これらの評価は主に投資家により、投資の判断材料として活用されます。そのようななか、フランスのEcoVadisはサプライヤーのパフォーマンスに特化した評価を行っており、その評価結果を活用するのは投資家ではなく、評価を依頼した企業(サプライヤーにとっての納入先企業)になります。※

ここ数年、大手企業がESG対応を進めるにあたり、自社だけでなくサプライチェーン全体のマネジメントが求められるようになってきており、多くの企業がサプライヤーに監査の実施や質問票の送付を行うようになっていました。

一方で、サプライヤー、特に中小企業にとっては、複数の納入先企業から、異なったフォーマットで異なる質問をたびたび受けることで本業に集中できず、現場の混乱、監査疲れなど、多大な負荷を抱えることにつながっていました。

そうした状況を受け、EcoVadisでは、企業がサプライヤーと情報を共有するためのプラットフォームを提供し、統一されたフォーマットおよび基準で評価を行うことにより、サプライヤーの負荷を減らし、効率的にサステナビリティに向けた取り組みが促進されるよう支援をしています。155カ国の198業種を対象に「環境」「労働・人権」「倫理」「調達」の4分野において企業を評価しており、世界中で45,000社以上が登録しています。

先月EcoVadisから公開された評価対象企業のトレンドに関する報告書 Business Sustainability Risk and Performance Index 2020 によると、年々企業によるパフォーマンスは向上しており、2019年には半数以上の企業が45点以上のスコアを獲得しています。また、大手企業に比べ、中小企業によるパフォーマンスの伸び率が大きく、特に「労働・人権」分野では中小企業が高スコアを獲得しているということです。(ただし、評価では企業の規模によって、質問の内容や数は調整されています)

こうしたプラットフォームの広がりを受け、中小企業にとっては、作業の負担は減る一方で、これまでよりも体系的、継続的に取り組んでいく本気度が求められることになります。

さて、納入先企業からこうしたプラットフォームへの登録や評価を受けるよう促された中小企業は、突然のことで何から始めたらよいのか、スコアが悪ければ取引停止になってしまうのではないか、と混乱するかもしれません。

ただ評価機関にサプライヤーの評価を依頼する企業の多くでは、自社のサステナビリティに関する取り組みはある程度進んでおり、そのなかで、CSR調達、サプライチェーン上の人権尊重などにコミットしていることが想定されます。そのため、サプライヤーのESGに関する評価が低かったとしても、突然取引停止とするのではなく、サプライヤーと共に改善に向け、取り組んでいくことが求められます。評価スコアの用途は評価を依頼した企業によって異なるでしょうが、こうしたプラットフォームを活用する最終的な目的は、サプライチェーン上のリスクを特定し、改善に向けた取り組みを進めることで、サプライチェーン全体の持続的な成長を目指すことです。そうした背景を踏まえると、サプライヤーは、たとえ初めはスコアが低かったとしても、継続的に取り組みを進めていくことで、戦略的なパートナーとして認められることになるでしょう。EcoVadisでは、一度評価を受けた企業に対し、次回以降に向け、改善すべき点や、どのようなことから優先的に始めればよいのか、ガイダンスを提供しています。

サステナビリティに向けた方針の作成や体制の整備、自社が貢献していきたい分野などの特定は、従業員の働きがいにもつながるところですし、サステナビリティに関心の高い就職活動中の若い世代にとっても魅力的な企業として捉えてもらえる可能性もあります。

とはいえ、中小企業のなかには、ESGやCSRに関する取り組みや知識がゼロの状態からのスタート、というところも多いでしょう。エコネットワークスでは、中小企業の皆さまの挑戦を応援しています。一つひとつの項目の背景や必要とされる情報、優先順位の見極めなどについて不安なご担当者様はぜひご連絡ください。一緒に対応方法を考えていきましょう。

(岡山奈央/調査分析プロジェクトマネジャー)

 

※サプライヤー向けのプラットフォームには、EcoVadisが運営する「SaaSプラットフォーム」のほかに、Sedexが運営する「Sedex Advance」、また、CDPも「CDPサプライチェーンプログラム」を運営していいます。

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