Sustainability Frontline
業界全体でSDGsへのインパクト最大化を目指すアプローチ
社会課題の解決に向けて、SDGsのゴール17ではパートナーシップが奨励されていることはすでにご存知の方も多いかと思います。
ただ、このパートナーシップの扱い方について、よくわからないのでとりあえずゴール17のロゴを貼り付けてみている、という企業も多いのではないでしょうか。
このゴール17は、ターゲットレベルで見てみると、企業に直接関連があるのはマルチステークホルダー・パートナーシップに関する17.16と17.17であることがわかります。
マルチステークホルダー・パートナーシップのなかでも、企業にとってハードルが高いと感じるのが競合他社との連携かもしれません。一方で、同じ業界のなかでも戦略や得意分野はさまざま。そうした違いを上手く活用し、業界一丸となることでSDGsへのインパクトを最大化することができるかもしれません。WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)では、同業種間の連携によるSDGs貢献に向けたロードマップを作成する際に参考となる枠組みを示しています。
WBCSDウェブサイト, SDGs Sector Roadmapsより
ロードマップ策定のための主要なステップは以下のように提案されています。
WBCSDウェブサイト, SDGs Sector Roadmapsより
1. 業界全体の現状を把握する
初めに、業界全体のバリューチェーンについて、現時点におけるSDGsに関連するインパクトをプラス、マイナス両方の視点から把握します。
自社一社による考察はすでに実施済の企業は多いかもしれませんが、業界全体で再度見直してみることで、新たなアプローチが見えてくる可能性があります。
以下のマッピングサンプルでは、次のような項目について確認しています。
- ・関連のあるSDGs(ターゲットレベル)
・業界としてどのように貢献できるか
・バリューチェーン全体のなかで、関連のあるプロセス
・直接的な貢献か、間接的な貢献か
・関連のある地域
・現時点におけるプラスの影響 (高、中、低)
・現時点におけるマイナスの影響 (高、中、低)
・業界全体で取り組むことによる貢献の大きさ (高、中、低)
・付加価値の大きさ (高、中、低)
WBCSDウェブサイト, SDGs Sector Roadmapsより
2. 主要な機会を特定する
1. で特定された業界全体によるインパクトやマテリアルなSDGsターゲットについて、次に、業界全体として貢献できる主要な機会を特定します。
“主要な機会”には、以下のようなパターンが考えられます。
- ・業界全体でプラスの影響を生み出すため、新規の取り組みを始める
・業界全体でプラスの影響を生み出すため、業界内の一社がすでに実施している取り組みを業界全体に広げる
・業界全体でマイナスの影響を与えている分野、取り組みについて、その取り組みを業界全体で停止する、もしくは影響を緩和するため代替となる取り組みに切り替える
このときに、各社によるサステナビリティ戦略なども考慮し、各社にとってプラスのインパクトが最大化される分野を特定することも大切な視点です。
3. 実施
最後に、実施に向け障壁となる項目を確認し、それらに対して考えられる解決策を特定します。
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障壁の一例:
複雑さ、社内での合意を得られない、リソース不足、限られたデータ、モニタリングシステムの不足、リーダーシップの不足など
その上でそれぞれの障壁を克服するための解決策を検討しますが、これらの解決策は、より広い視点で見るとSDGsへの貢献の促進剤として働く可能性もあるため、常に視野を広く保つことが、取り組みを前へ進めていくためのカギとなります。
その上で、短期、中長期の行動を特定していきます。
競合他社との連携は、社内での合意を得るのが難しく、躊躇してしまいがち、と感じていらっしゃる企業のご担当者様は、こうした枠組みなどを活用し、時間軸、貢献度をいくつかのレベルに分けて整理することで、より説得力のある根拠を示すことができるでしょう。
ここでご紹介した枠組み以外にも、業界の特性に合った他の分析のアプローチもあるかもしれません。SDGs達成に向け、他の組織との連携を進めたいとお考えの企業様は、ぜひご相談ください。一緒にアプローチを考えていきましょう。
(岡山奈央/調査分析プロジェクトマネジャー)