子どもの人権への配慮を投資基準のひとつに

2020 / 6 / 3 | 執筆者:岡山 奈央 Nao Okayama

 

オランダのESG評価機関Sustainalyticsと国連児童基金(UNICEF)が、昨年の秋に、子どもの人権に関する投資家向けのガイダンスを発行しました。

UNICEFウェブサイトより

 

子どもの権利とビジネスについては、同じくUNICEFが国連グローバル・コンパクト、セーブ・ザ・チルドレンと共同で2012年に発行した「子どもの権利とビジネス原則(Children’s Rights and Business Principles)」で企業が取り組むべき原則が示されています。しかしながら、現時点において、児童労働以外の子どもの人権に関する項目を人権方針に掲げている企業や声明を出している企業は、それほど多くありません。

そのような状況の中、今回発行されたガイダンスでは、投資基準に影響を与える子どもの人権に関するリスクとインパクトを示し、投資の判断基準の一つとして子どもの人権を考慮するよう投資家に促しています。

ガイドラインでは以下のような例が示されています。

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幼児期や児童期は自分に対するイメージやふるまい、特にジェンダーにおける認識が形成される時期です。多くの企業はマーケティングや広告により、この時期の子どもに影響を与えており、それはプラスの方向に行動を変容させることもあれば、子どもから自信を奪う形(ディスエンパワメント)でイメージを固定させてしまうこともあります。そして、結果的に子どもの健康、栄養、ウェルビーイングを妨げてしまう可能性があります。
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  • ディスエンパワメントの例

    ・伝統的なステレオタイプに基づいたジェンダーのイメージを使用した商品
    ・非現実的な痩せ型のモデルを起用した広告

    エンパワメントの例

    ・ジェンダーの平等に配慮したイメージを使用した商品
    ・現実的で健康的なモデルを起用した広告

一口に”子ども”といっても、ここでは18歳未満の人々を指しており※、現在もしくは数年後には消費者や従業員になる可能性のある年齢層も含まれています。

子どもの教育、健康、安全に投資することで、将来的には子どもたちが成長し大人になったときに、その企業の商品・サービスを支持してくれる消費者になってくれるでしょうし、その企業に忠誠心をもつ従業員になってくれる可能性もあります。長期的に見れば、よりレジリエントで平和な社会の構築につながります。

つまり、子どもをリスクとして捉えるのではなく、影響力のあるステークホルダーグループ、消費者グループとして捉え、製品開発や責任あるマーケティングに生かすことで、非常に大きな機会として捉えることができるのです。

このガイドラインでは、投資家の役割を以下のように挙げています。

  • ・企業の行動原則や従業員に関する方針や声明などに明確に子どもの権利を取り入れる
    ・責任ある投資方針に子どもの人権を明確に示し、子どもの人権に関するリスクについての取り組みを開示することへの期待を明示する
    ・企業のリスク・スクリーニングや、ESGリスクおよびESGに関するパフォーマンスを評価する際の指標に子どもの人権に関する指標を含める
    ・子どもの人権に関するリスクが高い業種、企業、地域を特定し、追加のデューディリジェンスを適用する
    ・子どもの人権に対し本質的に有害な考えを持つ企業への投資を避ける(たばこ、武器など)
    ・アクティブ・オーナーシップ(議決権行使や投資先企業へのエンゲージメント)を通じて、子どもの人権に体系的に取り組む。さらに、投資先企業(潜在的な投資先を含む)と子どもの人権について積極的に議論する
    ・投資先企業の商品やサービスが子どもの人権を尊重し、子どもの人権にポジティブに貢献しているか考慮して投資をする

その上で、投資家が企業の活動を判断する際のチェックリストを挙げています。

  • 1 . 企業が子どもをステークホルダーの一つとして特定しているか、また、経営層が責任を持って方針や取り組みに子どもの人権を取り入れているか
    2 . 企業が子どもの人権に関するリスクを考慮し、デューディリジェンスプロセスに反映させているか
    3 . 企業が子どもの人権に関する取り組みについて、KPIとともに開示しているか
    4.  企業が外部のステークホルダーとのエンゲージメントを通じて、子どもを保護し、エンパワメントする機会を特定できているか

子どもの人権に関するリスクやインパクトは、必ずしもすべての企業にとってマテリアルな項目ではないかもしれません。しかしながら、脆弱性を持つ特異なステークホルダーグループであり、かつ、世界人口の約3分の1を占める子どもの人権に配慮すること。それは、責任ある企業活動はもとより、中長期的に企業活動に少なからず影響を与えるものであるという見方は、今後投資家の間で確実に広まっていくでしょう。

子どもの健全で安心な成長をサポートするためのビジネスの機会は、SDGsのゴール3、4、5、8 などともつながるところです。

児童労働などのリスクについてだけでなく、子どもの健全で安心な成長をサポートするためのビジネスの機会を特定し、人権方針の見直しなど子どもの人権について体系的に取り組んでいただくことを期待しています。

(岡山奈央/調査分析プロジェクトマネジャー)

 

※1990年に発効した国連子どもの権利条約(日本は1994年に批准)では、18歳未満の人たちを子どもと定義しています。企業にとって子どもは消費者であり、従業員の家族であり、従業員そのものである場合もあります。

条約でも示されている通り、子どもは成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもならではの権利を有しています。成長過程の子どもは大人と比べて脆弱であり、大人にとっては何ら問題のない企業活動も、子どもにとっては有害な影響を及ぼす可能性があるといった点から、子どもは他のステークホルダーとは区別して考える必要があります。

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