気候変動でジェンダーに基づく暴力が増加する

2020 / 2 / 4 | 執筆者:近藤 圭子 Keiko Kondo

枯れた土地に咲く黄色い花

klimkinによるPixabayからの画像)

 

異常気象による災害のあとは、
・児童婚が増える
・性的搾取を目的とする人身取引は2〜3割増加する

このような内容を含む報告書を、2020年1月、国際自然保護連合(IUCN)が発表しました。

英紙Guardianの取材に対し、執筆者の一人 Cate Owren氏は、気候変動でジェンダーに基づく暴力が増加すると示すエビデンスは十分にあると応じています。

 

報告書は米国国際開発庁とのパートナーシップで行われているIUCNのプロジェクト Advancing Gender in the Environment (AGENT)によるものです。1000件以上の文献調査、100件近くのケーススタディ収集、300件以上の専門家のヒアリングのもと、環境問題とジェンダーに基づく暴力の関連をまとめています。
調査報告書:Gender-based violence and environment linkages

ジェンダーに基づく暴力とは、家庭内暴力、性暴力、売春、強制結婚、児童婚などです。報告書にはたとえば次のような事例が掲載されていました。

  • マラウイの13歳の女の子。両親は小さな土地を持ち耕作をしていたが、洪水ですべての作物を流されてしまった。それからは、薪を集めて売ることで、なんとかわずかな食料を買って暮らしていた。あるとき、彼女は男性から結婚を申し込まれた。男性とは初対面で、彼女は結婚したくなかったが、両親はそれを望んだ。彼女も、結婚すれば、食い扶持が減って家族が楽になることをわかっていて、やむを得ず結婚した。

読んでいてつらくなるような事例が続きます。報告書にも書かれているように、ジェンダーに基づく暴力はその一瞬だけではなく、人生を変えてしまいます。

  • 森林減少の影響で、南スーダンの16歳の女の子は遠くまで薪を取りに行かなければならなくなり、その途中で性暴力の被害にあった。妊娠がわかり、彼女は家族や婚約者から見放されて追い出された。妊娠8ヶ月のとき、警察が彼女を逮捕。非合法に出産しようとしていると収監した。

 

今後IUCNでは、GBV*-Environment Knowledgeプラットフォームを開設し、ナレッジの蓄積や実践の共有を始めるそうです(*GBV: Gender-based violence ジェンダーに基づく暴力)。メール登録で最新情報を受信できます。

報告書にはほかにも、森林利用や農業、漁業、水資源、違法伐採や採掘、インフラ開発などにおけるジェンダーに基づく暴力、また環境保全を仕事にする人へのジェンダーに基づく暴力についてまとめられています。台風の後に家庭内暴力が増加したという研究結果や、避難所でトランスジェンダーの方がいづらさを感じている事例など、より身近に日本国内でも起こっているのではないかと思わされる内容もありました。

あらためて持続可能な開発目標(SDGs)の前文を見ると、17の目標と169のターゲットは「すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指す」とあります。人権とジェンダー平等は、環境問題を含むあらゆる課題の前提に敷かれている。報告書を読んで、その認識を新たにしました。企業の方にはぜひ経営レベルでの研修などに、この報告書のような情報を取り入れていただきたいと思います。

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