GRIに見るダイバーシティ情報開示  障害者雇用率から一歩進んで

2019 / 11 / 6 | 執筆者:EcoNetworks Editor

サステナビリティの重要課題として「人の多様性」「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げる企業は数多くあります。

性別、人種、ワークスタイル……。サステナビリティレポートで、どのような取組みをご覧になったことがあるでしょうか? また、ご自身の組織では、どのような取組みを開示されているでしょうか?

障害のある方の権利も、重要なポイントです。日本企業でよく見られるのは、障害者雇用率や特例子会社を始めとする労働環境の情報でしょう。しかし、人の多様性を重要課題として挙げるのならば、障害のある方の権利に関する情報は、労働環境に限る必要はありません。

Global Reporting Initiative(GRI)が 、Foundation ONCEと制作したレポート “Disability in Sustainability Reporting”に、ヒントがまとめられています。
Disability in Sustainability Reporting(PDF)
(※Foundation ONCE:スペインを拠点とする障害者支援団体)

”Disability in Sustainability Reporting”の表紙

”Disability in Sustainability Reporting”の表紙

障害のある方の権利は、自組織にとって重要課題か

レポートでは、GRIスタンダードに則り、情報開示のステップを紹介しています。

まずは、障害のある方の権利が自分たちの組織にとって重要課題であるか否かの特定です。自組織の事業や製品・サービスは、障害のある方の権利に対し、重大な影響を与えるでしょうか? 「重大な影響」とはポジティブな影響・ネガティブな影響の両方を指しています。

重要課題として特定されるならば、障害のある方の権利に関連する情報の開示が求められます。

GRIスタンダード項目別 開示拡充へのヒント

レポート “Disability in Sustainability Reporting”で注目したいのは、GRIスタンダードのうち障害のある方の権利に関わる項目がリストアップされ、開示充実に向けたヒントが提案されていることです。

たとえば、「417-1 製品およびサービスの情報とラベリングに関する要求事項」であれば、製品やサービスの情報を障害がある方にとってわかりやすく表示しているか、どのような手法を取っているか(点字、ピクトグラム、大きな表示など)の開示が提案されています。

具体的な提案内容は割愛しますが、以下の項目がリストアップされています。
(冒頭の数字はGRIスタンダードの番号)

Organizational governance and values
102-12:外部イニシアティブ
102-16:価値観、理念、行動基準・規範
102-24:最高ガバナンス機関の指名と選出
405-1:ガバナンス機関および従業員のダイバーシティ

Embedding respect
102-27:最高ガバナンス機関の集合的知見
103-2:マネジメント手法とその要素
406-1:差別事例と実施した救済措置
412-2:人権方針や手順に関する従業員研修
417-3:マーケティング・コミュニケーションに関する違反事例
419-1:社会経済分野の法規制違反

Employment and decent work
102-8:従業員およびその他の労働者に関する情報
103-2:マネジメント手法とその要素
401-1:従業員の新規雇用と離職
404-2:従業員スキル向上プログラムおよび移行支援プログラム
405-1:ガバナンス機関および従業員のダイバーシティ

Accessibility
102-6:参入市場
102-7:組織の規模
103-2:マネジメント手法とその要素
203-1:インフラ投資および支援サービス
417-1:製品およびサービスの情報とラベリングに関する要求事項

Business relationships
103-2:マネジメント手法とその要素
204-1:地元サプライヤーへの支出の割合
412-3:人権条項を含むもしくは人権スクリーニングを受けた重要な投資協定および契約
414-2:サプライチェーンにおけるマイナスの社会的インパクトと実施した措置

Local community
103-2:マネジメント手法とその要素
201-1:創出、分配した直接的経済価値
413-1:地域コミュニティとのエンゲージメント、インパクト評価、開発プログラムを実施した事業所
413-2:地域コミュニティに著しいマイナスのインパクト(顕在的、潜在的)を及ぼす事業所

上記の一覧を見るだけでも、障害のある方の権利に関する開示の方向性は、ガバナンス、従業員、顧客、サプライヤー、コミュニティと多岐にわたっています。そして、レポート本文を参照して、開示充実のためのヒントを読んでいくと、多様性は社内の労働環境に限った話ではないとわかるでしょう。

多くの日本企業にすでに開示している、障害の有無を問わず働ける環境の整備は、
・ガバナンスやマネジメント、製品・サービス開発への当事者の意見反映
・生み出された製品・サービスが、市場を通じて、障害のある方の権利向上に寄与
・製品・サービスを生み出すための事業投資(例:工場設立やサプライヤーの選定)が、障害のある方の権利向上に寄与
と、より広いポジティブな影響につながっていく可能性を持っています。

左:GRIスタンダードの項目、右:開示充実に向けたヒント

開示充実に向けたヒントの例(P43より)

 レポート”Disability in Sustainability Reporting”を活用するには

最後に、ダイバーシティ&インクルージョンを重要課題に掲げる組織が、このレポートをどのように活用できるかを考えてみます。組織の状況によりますが、たとえば以下のような可能性が考えられます。

1.<洗い出し>
GRIの各項目と関連する部署を紐付け、既存の取組みの洗い出し

2.<働きかけ>
洗い出しを踏まえ、各部署に現在の取組みをヒアリング
レポートの枠組みを通じて、各部署に対し、今後の取組みのための視点をインプット

3.<情報開示>
取組みの現状や今後の見通しを開示

整理した情報は、サステナビリティ戦略への反映や、ステークホルダーとの対話にも活用できます。また、このレポートでは、障害のある方の権利に焦点を当てていますが、他のマイノリティグループへの応用も検討できるのではないでしょうか。

ダイバーシティ&インクルージョンをもう一歩進めたい方に、一読をおすすめしたいレポートです。

(近藤圭子/プロジェクトマネジャー)

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