Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
中長期目標の見直しに必要なこと Philipsの事例から
Philipsといえば皆さん何を思い浮かべますか。電動歯ブラシやシェーバーでしょうか。
あるいは照明サービスでしょうか。電球を売るのではなく明るさを売る、サーキュラーエコノミーのビジネス事例として有名ですね。
現在この照明ビジネスは、Philips LightingからSignfyへと名前を変え、2016年にRoyal Philipsとの間で交わされた合意を元に、Philipsとのパートナーシップは継続しつつも、独立した企業体として事業を行っています。
近年Philipsはヘルスケア領域に注力しており、それに伴い事業ポートフォリオの転換を進めてきました。今年新たに発表されたサステナビリティ目標にも、事業構造の変化が反映されています。
Philipsは‘Lives Improved’という、人々の生活向上を目指すサステナビリティに関する中期目標を掲げています。
今年、2030年のSDGsへの貢献をターゲットに、新しい目標が発表されました。毎年平均6%のペースでリーチする対象を拡大し、4億人の恵まれない人々のヘルスケアへのアクセス改善を含む、30億人の生活向上に貢献していくとしています。
そして今回から、Signyfyの照明事業についてはサステナビリティ目標の対象から外す、と述べています。
実はPhilipsは、2012年に既に、2025年までに30億人の生活向上に社会面と環境面から貢献するという目標を発表していました。しかしその後、ヘルスケア領域に注力していく方向性が発表され、事業構造の見直しが進められてきました。
それに伴い、サステナビリティ目標も見直しの必要性が出てきました。‘Lives Improved’の実績は、照明事業を含むと2018年時点で22.4億人に到達していましたが、照明事業を対象から除外して計算すると、15.4億人へと減少します。そこで今回、2030年をゴールにした新たな目標の発表に至ったのです。
組織としての本気度を示し、課題解決のための大きな変革を起こしていく上では、中長期のコミットメントを発表することは重要です(参考:「インパクト最大化に向けて 長期コミットメントを伴う社会プログラムの作り方」)。一方、これだけ激しく社会環境が変化する中で、ビジネスのあり方も変わってきます。ビジネスの内容が変われば、当然サステナビリティに関する中長期の目標にも影響が生じます。
今回Philipsがそうした変化に柔軟に対応できたのは、‘Lives Improved’という中核に据えているミッションの普遍性と共に、目標とする数値の計算方法を詳細に設計していたことが大きいです。
計算方法はこちらに開示されています。
Methodology for calculating Lives Improved
メソドロジーでは、目標数値の算出ステップ、参照数値のソース、そして複数の製品が1人にリーチすることで生じる重複をどうなくし数値の正確性を高める工夫をしているかについて、詳述されています。この開示は第三者保証も受けています。
サステナビリティの、特に社会面のコミットメントの数値の計算方法を、精緻さを高める努力を含めちゃんと開示している例は多くありません。そこにしっかり取り組むことが、事業変化への対応と透明性の確保に役立つことをこの事例は示唆してくれます。
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