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子どもをターゲットにした広告のゆくえ
最近、米国大手IT企業Googleとその傘下のYouTubeが、子どものプライバシーを侵害しているとして訴訟を起こされ、多額の和解金を支払ったことは記憶に新しいですね。
1998年に米国で公布された児童オンライン・プライバシー保護法(COPPA)では13歳未満の子どもをターゲットにしたマーケティングが禁止されていますが、YouTubeが子ども向けに制作した動画を通して不正に子どもに関するデータを収集しており、そうした行為は法律違反に該当する、というのが申し立ての内容です。
日本ではそれほど違和感なく受け入れられている、子どもをターゲットにした広告やマーケティング。
オンライン上だけでなく、子ども向けの人気番組の合間に関連するおもちゃの広告が放映されたり、お店では子どもの目線の先に子どもがほしがりそうなものが配置されていたりして「あれ、ほしい!」とねだる子どもに困惑した経験や、そうした場面を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
こうした直接子どもをターゲットとした広告やマーケティングに対し、海外では早くから法規制が整備されてきています。
スウェーデンでは1991年に、13歳未満の子どもをターゲットにしたおもちゃや食べ物などの広告を子ども向けの番組の途中や前後に放映することが法律で禁止されました。
13歳未満の子どもは、広告の意図や影響を自分自身で判断するには未熟な成長過程にあり、そうした脆弱性を狙った広告は子どもの人権侵害に当たるという理由からで、ノルウェーでも同様に法律で禁止されています。
また、カナダのケベック州でも13歳未満の子どもをターゲットにしたマーケティングが禁止されており、そうした規制に違反するとして2018年11月、ある子どもの父親がマクドナルドを相手に訴訟を起こしました。
この訴訟では、ハッピーミールのセットのおもちゃは人気の映画のキャラクターなどが扱われており、子どもはシリーズをすべて揃えたくなるように促されていることに加え、おもちゃの見本が店舗内で子どもの目の高さに置かれており明らかに子どもを直接のターゲットにしている、というものでした。
国際連合児童基金(UNICEF)では2018年、子どもとデジタルマーケティングについて、人権、リスク、責任の観点から考察するディスカッション・ペーパーを発行し、その中で”子どもは他の消費者グループのように企業のビジネスから利用されるべきではない”とした上で、子どもの感情や心理を利用したマーケティングなどの禁止を提唱しています。
日本では子どもをターゲットとした広告やマーケティングによる影響についてはこれまであまり注目されてきませんでしたが、こうした海外での意識の高まりにより、日本でも子どもの人権を尊重するエシカルな企業が選ばれるようになる日も近いかもしれません。
(岡山奈央/調査分析プロジェクトマネジャー)