欧州最大LGBTQI+の祭典「London Pride」

2019 / 8 / 29 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

London Prideは、欧州最大規模を誇るLGBTQI+コミュニティの祭典であり、今年で50周年を迎えます。私はここ数年は家が近いということもあり、毎年パレードを見学しています。

街が一体となって祝福

ロンドンではプライドの時期が近くと、町中が虹色に染め上がります。一つのイベントというより、町全体で取り組むムーブメントと化しているのです。パレード当日には、Google Mapsにおいても開催地であるRegent Streetのエリアが虹色になります。また、タクシー配車アプリのUber上においても車が虹色で表示されていました。

そしてそれらのムーブメントの高まりがピークに達して花開くのが、パレードの日です。今年は7月6日に開催されました。参加者の一人に話しかけてみたところ、「今日は一年で一番大切な日なんだ」とおっしゃっていました。当日はパレードがメイン・イベントですが、Trafalger Squareをはじめ、ロンドン中の様々な場所でライブやイベントが同時に行われます。誰もが自分の好きに着飾って、口笛を吹きながらお出かけし、道ゆく人々が「Happy Pride!」と声を掛け合うような日です。


熱気にあふれるロンドン中心部、ピカデリー・サーカスの様子


人間だけのお祭りではありません

気候変動問題にも共鳴

今年のプライドが特徴的だったのは、公式HPにおいて前日に「気候変動緊急事態宣言」が出されたことです。これは、現在ロンドンで活発に気候変動デモを展開しているExtinction Rebellionに共鳴して出されたものです。プライド運営側は、地球の危機とは、我々「全員」が対応しなければならないことだからと、宣言した理由を説明しています。

Extinction Rebellionは「絶滅への反抗」とも訳され、「人間の生産活動による地球温暖化 、生物の多様性の喪失 、そして人類の絶滅と生態システム全体の崩壊の危険に対する有効な政策の欠如に対して抗議し、温暖化に対する政治的な決断を促すために非暴力の直接行動を用いる社会・政治的な市民運動」と説明されており、英国での社会現象に発展しています。

プライドにおいては、環境負荷削減対策として、2017年からパフォーマーのメイクや飾り付けに使用するグリッターをプラスチック・フリーにしているそうです。そしてパレードの参加者はプラスチックの風船などを飛ばすことが禁止されています。

また、大きな変化として、昨年まで大きなバスを用いたパレードが行われていたのですが、今年度から排ガス削減のためにこうしたバスがなくなりました(移動に不自由のある方々のコミュニティは例外として)。できるだけ低炭素の乗り物を使うようにという指示が出されたためです。


Facebook社のパレードバス(2017年)

背景にあるヘイトクライム

ロンドン市長であるサディーク・カーン氏も毎年パレードに登場します。今年は開会式において、前市長であるボリス・ジョンソン氏(現在の英国首相)が過去に差別的な発言をしたことに関して強く批判弾劾しました(その後ジョンソン氏はロンドンプライドを支持するTweetをしました)。

ロンドンでは今年、二階建てバスにおいてレズビアンのカップルが暴行を受けたばかりです。この事件は英国社会に大きな衝撃を与えました。残念なことにロンドンでは2014年に1488件だったヘイトクライムが、昨年には2308件にまで増加しています。こうしたヘイトの動きに打ち勝っていくためにも、ロンドン・プライドは毎年パワーアップしているのです。

プライドの時期にロンドンを訪れると、街中が団結してダイバーシティを祝福しようとしていることが分かります。同時に将来の世代も繁栄できるよう、環境対策にも注力されているのです。

行政、企業、市民が一丸となって社会を良くしていこうとする動きが目に見えて実感できる――そんな素敵なイベントでした。

(サステナビリティ・コンサルタント 中久保 菜穂@英国/日本)

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