Sustainability Frontline
リモートワークはジェンダー平等を遠ざけるのか
ますます広がりを見せるリモートワーク。
総務省の調査によると、企業の約4分の1(26.3%)※が導入済または導入を予定しているそうです。エコネットワークスも全員がリモートで仕事をしており、私もそのメリットを感じている一人です。
ところが、ILOが今年3月に発表した報告書(日本語版は6月発表)に気になる指摘を見つけました。
たとえば、リモートワークは労働者が仕事と家族的責任のバランスをとるのに役立つ。しかしながら、そのような柔軟な労働時間の取り決めは、特に女性だけが利用する場合、無償のケア労働の大部分を担い続けながらジェンダー役割をさらに強化することもあり得る。
この報告書は、ILO100周年を記念するイニシアチブの一つがまとめたものです。女性の就労や昇進を妨げる原因として、伝統的に女性が担うとされてきたケア労働(家事や育児、介護など)の存在を挙げています。
世界の女性がケア労働に従事する時間は、1997年から2012年の15年間で、1日あたり15分短くなりました。一方、男性がケア労働に従事する時間は、1日8分の増加。格差は小さくなったものの、このままのペースでは、解消までにあと209年かかると言います。
報告書では、例えば以下を提言しています。
・男女ともに、勤務時間に関する選択と管理を可能にする時間主権(time sovereignty)を高めること
ケア労働を分け合うためには「時間があること」が重要だと指摘。労働時間に対する自律性を持つべきだとしています。
・公的ケアサービスへの投資
家事、保育、介護などのケアサービスでの雇用を増やすと、非ケアサービスの雇用も間接的に増えるという研究を示しています。そして、そのケアサービスの仕事はディーセントであるべきです。
リモートワークは、家事や育児、介護と仕事を両立する上で確かに有効です。
しかし、女性だけが行うのでは、ケア労働は女性がするものという考えの固定化につながりかねません。
この指摘を考えると、リモートワークの対象を育児や介護を担う人に限定せず従業員全員に拡大する動きは、性別に関わらない利用を促すという点で意義あるものと言えるでしょう。
男性が妻の勤務先の育児支援制度に「ただ乗り」をしているという指摘や 、出産した女性社員の夫に対し育児への協力を呼び掛ける会社 もあります。
「女性が家事、育児、介護をしやすい社会」を作るのではなく、性別関係なくケアに関われる仕組みをどう作るのか。引き続き考え、実践を重ねていきたいテーマです。
※調査では「テレワーク」としており、その内容は、モバイルワーク、在宅勤務、サテライトオフィス勤務。
(近藤圭子/プロジェクトマネジャー)