Sustainability Frontline
GRIスタンダード要求事項の更新、その内容は?
6月、GRIスタンダード「303:水と廃水」「403:労働安全衛生」の改訂版が発行されました。
さっそく対応のご支援を行っています。
日本語版はまだ発行されていないため、概要をご紹介します。
水・労働安全衛生ともに、要求事項が全体的に変わり、
求められる開示内容も細かくなっています。
また、新しい用語も多く登場しています。
2021年1月1日以降に発行される報告書から対応が求められますが、
早期の採用が奨励されています。
また、これらのテーマについて今後取り組みが必要となるポイントをおさえるために
内容を把握しておけるとよいでしょう。
変更点の概要は以下の通りです。
◆303:水と廃水
・取水先の選択肢が変更
・取水量に加えて、消費量の開示が追加
・総量だけでなく、ハイリスク地域の取水・消費量の開示が追加
・排出について、排出先+水質に加えて、量の開示が追加
◆403:労働安全衛生
・2017年に発行された「労働安全衛生の初の国際規格ISO 45001」に対応し、
労働安全リスク発生防止・緩和の仕組みに関する要求やリスク特定等が追加
・従業員だけでなく、組織で働くすべての労働者を対象とすることを、既存のスタンダードよりも強く強調
・傷害や疾病について、従来の生産性ロスの視点から、より労働者への影響視点に変更
・業務上の傷害や疾病予防/対応に加え、労働者の健康向上のための啓発等の取り組みが追加
要求事項の概要は以下の通りです。
<303:水と廃水>
303-1:
・事業と水に関するつながり
・ターゲットと組織のマネジメントアプローチ全体や地域の課題、公共政策との関わり
・水関連のインパクト軽減に関して、ステークホルダーとの協働方法
・データ集計方法や参照した基準等
303-2:
・排水に関する最低基準と基準の決定方法
303-3:
・取水量を以下の内訳別に開示
・水ストレスが高い地域の取水量を以下の内訳別に開示
-地表水
-地下水
-海水
-採掘や加工などの工程で使用する水(produced water)
-地方自治体の水道や他の公営・民間水道施設からの水
・淡水/それ以外の水源からの取水量
・データ集計方法や背景情報、参照した基準等
303-4:
・以下の排出先別にそれぞれの排出量を開示
-地表水
-地下水
-海水
-その他の組織に送られた水
・淡水/それ以外の水源に排出された水の量
・水ストレスが高い地域に排出された水の量
・環境負荷物質の定義、排出量の制限の仕組み、排水に関する違反状況
・データ集計方法や背景情報、参照した基準等
303-5:
・総消費量
・水ストレスが高い地域の総取水量
・貯水池への影響が大きい場合、使用量を開示
・データ集計方法や背景情報、参照した基準等
<403:労働安全衛生>
403-1:
・労働安全衛生マネジメントシステムが法律やその他基準・ガイドラインに沿ったものか
(参照した法律またはガイドラインも明記)
・マネジメントシステムの対象となる労働者と労働内容の範囲
403-2:
・労働災害リスク特定のプロセス
・労働災害報告のプロセス
・労働者が危険だと感じる業務から離れることができる方針やプロセスの有無
・労働災害や事故を調査するためのプロセス
・健康労働安全に関する通報を行った人が守られる仕組みの有無
403-3:
・労働安全リスクの特定・予防と危険性排除のための健康労働安全の仕組みの説明
(労働者がそれらの仕組みを使用できるかや、仕組みの質の保証方法も開示)
403-4:
・労働安全マネジメントシステムの確立や実施における労働者の参加状況
・正式な労使合同安全衛生委員会がある場合、その責任、活動頻度、意思決定方法
(労働者がこの活動を代表を務めているかも含める)
403-5:
・労働安全衛生に関する研修の内容
403-6:
・業務上傷害以外の医療・ヘルスケアサービスの提供状況と、対象となる労働者の範囲
・業務上傷害以外の健康リスクに関する啓発の取り組み
403-7:
・取引先を含め、自社以外で発生し、事業や製品・サービスに直接関係のある健康安全衛生インパクトを
防止・緩和するための取り組み
403-8:
・健康安全衛生マネジメントシステム対象外の従業員以外の労働者数
・開示の範囲から外れている労働者がいる場合、その理由
・データ集計方法や参照した基準等
403-9:
・従業員とそれ以外の労働者について業務上傷害の死亡・重症の数と発生率、
怪我の数と発生率、主要な怪我の種類、労働時間
・重症が発生する可能性のあるリスクの特定方法と、報告期間に発生した危険
・リスクを減らすための仕組み
・開示の対象となっていない労働者がいればその理由と種類を開示
・データ集計方法や参照した基準等
403-10:
・従業員とそれ以外の労働者について、業務上の疾病による死亡者数、
業務上の疾病数、主要な業務上疾病の種類
・疾病を引き起こす可能性のあるリスクの特定方法と、報告期間に発生したリスク
・開示の対象となっていない労働者がいればその理由と種類を開示
・データ集計方法や参照した基準等