Sustainability Frontline
地球上の鳥の70%が家畜 畜産産業格付、日本企業は最低評価
Photo: FAIRR investment risk report 表紙
投資リスクの観点から畜産産業に関する問題提起を行うイニシアティブ
「Farm Animal Investment Risk and Return(FAIRR)」が、
世界の食品企業60社を対象に実施した格付の結果を公表しました。
FAIRRには、Robeco、Hermes investment management、
Triodos investment managementなど大手の投資運用機関や財団など38の組織が加盟しています。
今回、最も低リスクと好評価されたのが、
ノルウェーの水産関連会社Marine Harvest、Lerøy Seafood Group、Salmar、
ニュージーランドの乳業企業Fonterra Co-operative Group、
フェロー諸島の水産会社Bakkafrostの5社です。
日本企業は、日本ハム(31点)、日本水産(25点)、プリマハム(17点)と
3社とも高リスクでした。
◆調査対象となった9つのリスク要素は以下の通り。
●短期リスク
・食の安全
・動物福祉
●中期リスク
・抗生物質の使用
・廃棄物、排水
・水の管理
・労働安全衛生
・持続可能なたんぱく質の生産
●長期リスク
・温室効果ガス排出量
・森林破壊と生物多様性の損失
この中でも最もリスクが高い「食品安全」と「動物福祉」の事例として、
以下が挙げられていました。
・南アフリカでは2018年に人畜共通の感染症(リステリア症)が発生したことで、
豚肉生産企業の利益が36%、加工肉への需要が75%減少した。
・動物福祉に関する覆面調査やドキュメンタリー制作が増える中、
動物の飼育環境に関するネガティブなニュースがSNSで急速に広がる傾向にある。
米国で話題になった「Blackfish」という映画の公開により、米国に3箇所ある大手の水族館「Seaworld」の利益が3ヶ月で84%減少した。
◆今回の調査のKey findingsは以下の通り。
・60社のうち36社が高いリスクにさらされている。
・全体的な開示状況が最もよかったのが、廃棄物管理に関する罰金の状況。
(動物の排泄物管理に関する規制が遅れているが、地域住民の声や訴訟が増えていることから、自主的な管理を進める企業が増えている)
・全体的な開示状況が最も悪かったのが森林破壊防止に関する具体的な方針や目標。
・抗生物質を最も多く使う産業でありながら、抗生物質の使用に関する情報開示をできているのは14社のみ。
・WHOでは、病気でない動物への抗生物質の投与の禁止や、抗生物質の全体的な使用量の大幅な削減を推奨しているにも関わらず、46社は化学物質の使用削減に関する方針を持っていない。
・畜産産業は飼料の生産や肥料の管理、家畜の腸内発酵などにより世界の排出量全体の14.5%にあたるGHGを排出しているが、それに関する開示や第三者認証が不十分。
世界の中間層増加等により食肉の生産は増え続け、
現在、なんと世界で存在する鳥の70%、哺乳類の60%が家畜になっています。
世界のほとんどの機関投資家のポートフォリオには畜産企業が入っており、
関連リスクへの対応を求める声が高まっていくと考えられます。
※過去に紹介した「畜産動物福祉に関する企業のベンチマーク(BBFAW)」
でも今年発行された2017年版から日本企業が対象となり、
「イオンホールディングス」と「セブン&アイホールディングス」は、
課題認識が見られないとして最低評価となっています。