社会・人的資本プロトコル、評価枠組み原案を発表

2018 / 5 / 1 | カテゴリー: | 執筆者:Yurie Sato 佐藤百合枝


写真:Social & Human Capital Protocol原案

WBCSDは2018年4月に企業が社会資本や人的資本(従業員、サプライヤー、地域の人々、顧客など)を計測・評価するための「Social and Human Capital coalition」というイニシアティブを発足し、評価ガイドラインの原案を公表しました。

非財務情報の開示を強化する企業が増えていますが
企業と社会・人材資本のつながりを明らかにできている企業は少ないため、
このイニシアチブでは
企業が事業や社会へのリスク・機会の視点で資本へのインパクトや依存度を
測定・理解できるようになることを目指します。

非財務資本の評価枠組みとしては
2016年に発行された自然資本プロトコルがあります。
今回の枠組みは自然資本プロトコルの4つのステージに基づいているものの具体的なステップの内容が変わっています。

また、この枠組みは事業全体や製品・プロジェクトの評価を対象としたもので
個別のプログラム評価ではないことが強調されています。

個別のプログラム評価は
ある取組みによって目標のアウトカムを達成したか評価するものですが、
このガイドラインは事業が社会・人的資本の増減にどのように・どれくらい影響を持つか、
また社会・人的資本にどれくらい依存しているかを評価するものです。

基本的なアプローチは以下の通りです。

ステージ1:構想
STEP1) 関連がある社会・人的資本の課題をバリューチェーン全体で特定
STEP2) 評価を行うことで影響を受ける可能性がある経営的な意思決定や事業を特定
STEP3) 社会・人的資本関連の課題を優先順位付けする

ステージ2:目的の定義
STEP4) 情報を伝える相手を決める(社内外ステークホルダーの中から考える)
STEP5) 評価の範囲を決める
(①評価対象:対象となるプロジェクト・製品・事業範囲、②地域の範囲、③時間軸)
STEP6) 評価するインパクトや依存の度合いを特定
(インパクト:事業と社会への影響、依存:自社が社会・人的資本から受け取る便益)

ステージ3:計測と価値評価
STEP7) 価値の評価方法を選ぶ(定性/定量/金銭評価 ※各評価方法の概要はP42〜50)
STEP8) 評価における指標と基準を選ぶ(※指標の例はP54〜56)
STEP9) 測定と評価を実施

ステージ4:適用
STEP10) 主要な経営判断に評価内容を反映
STEP11) 事業プロセスに計測・評価を含む
STEP12) 企業による社会・人的資本の計測・評価を社会に広げる

具体的な定量評価の方法や資本への影響に関する価格表は公開されていませんが、
Step7で代表的な評価テクニックの特徴・必要な情報・必要な時間・難易度等が、
Step8では指標の例がわかりやすく説明されています。

Social and Human Capital coalitionのウェブサイトでは
各ステップで実際に使用できるツールが上記のステップに沿って整理されているほか
実際に評価を実施している企業の幅広い事例も紹介されています。

セクターガイドも今後順次公開で、森林に関連するガイドが公開済です。

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