Sustainability Frontline
Ceres、米国企業600社のESG情報開示に関する報告書を発行
Ceres報告書「Turning point:Sustainability Roadmap2020に向けた進捗」
2010年、米国の環境NGO Ceresは、企業が持続可能な事業を行うために2020年までに達成すべき以下の4テーマ20項目を定めた「Ceres Sustainability Roadmap2020」を策定しました。
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1.ガバナンス
1) 取締役による監視体制
2) 経営幹部の説明責任
3) 取締役・従業員への報酬
4) サステナビリティを考慮した方針・マネジメントシステム
5) サステナビリティ戦略と整合性のある公共政策対応
2.ステークホルダーエンゲージメント
6) ステークホルダーの意見を考慮した定期的なマテリアリティ特定プロセス
7) ステークホルダーエンゲージメントの事業戦略への反映とその開示
8) 投資家との定期的なエンゲージメント
9) ステークホルダーエンゲージメントへの経営幹部層の関与
10) 市民社会や同業他社との協働
3. 情報開示
11) GRIや業種に特化した指標に基づく情報開示
12) 財務報告でのサステナビリティ情報の開示
13) 子会社やサプライチェーンを含めた情報開示
14) 多様な媒体での情報開示
15) 第三者認証
4.パフォーマンス
16) GHG排出・エネルギーの効率化・事業施設・水・廃棄物・人権に関するデータ測定と改善
17) 社内方針のサプライヤーへの適用
18) 低炭素な輸送/移動手段
19) サステナビリティを考慮した製品やサービスの開発・提供
20) 多様性を考慮した雇用・研修の実施、福利厚生の提供
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2018年、CERESはこのRoadmapにそって米国の大手上場企業600社以上の取組み状況を分析した報告書「Turning point」を発行しました。
(対象企業の時価総額の合計は米国企業の時価総額全体の80%を占める)
報告書の10のKey findingsの概要は以下の通りです。
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①マテリアリティ
・32%の企業がマテリアリティ特定を行うが、事業戦略や経営の意思決定への活用方法を開示しているのは6%。
(好事例:Citiグループは、多様なステークホルダーの意見からマテリアリティを特定し、
それを基に1,000億円を投資する環境ファイナンス中期目標を設定)
②役員レベルのエンゲージメント
・65%が役員レベルをサステナビリティの責任者に任命しているが、サステナビリティに関する成果と役員報酬を紐付けているのは8%。
(好事例:金属加工企業Alcoaは、労働安全衛生、CO2排出量、役員・従業員の多様性を役員報酬のインセンティブに結びつける)
③サステナビリティに関する従業員向け研修
・38%が従業員向けにサステナビリティに関する何らかの研修を実施している。
研修を全社で実施しているのは9%で、業務にあわせた研修を行っているのは3%。
(好事例:Bank of Americaは、全社でESG研修を実施した上で従業員に環境・社会リスク方針枠組みを共有し、従業員が各業務でリスクの特定・評価・監視できる仕組みをもつ)
④ESG要素が財務情報に与える影響
・51%が、気候変動が財務情報に与える影響を開示しているものの、32%は規制リスクのみを考慮している。
(好事例:Pepsicoは、アニュアルレポートで水不足がサプライチェーンや事業全体に与える影響を財務面から開示。環境問題に取り組まないことに対するレピュテーションリスクについても言及)
⑤気候変動緩和に関する目標
・64%がGHG排出削減にコミットするが、28%は期限を設定せず、科学的根拠に基づいた目標を持つのは9%。
・32%が再生可能エネルギーを増やすことにコミットするが、期限付き目標を持つのは10%。
⑥水管理
・水への依存度が高い食品・飲料・アパレル・半導体業界の81%が水管理(Water stewardship)プログラムを持つが、バリューチェーン上でリスクの高い部分を特定し、定量目標を持つのは29%。
・調査対象企業全体の55%が水の使用管理にコミットし、14%がバリューチェーン上で最もリスクが高い部分に焦点をあてた目標を設定。定量目標を持つのは%。
⑦人権
・自社の従業員向けの人権方針を持つのは49%で、方針を実施する仕組みを確立しているのは47%。
・サプライチェーンを含めた人権リスク評価を実施しているのは15%で、児童・強制労働を禁止する明確な方針を持つのは67%。
(好事例:半導体・通信会社Qualcommは、人権方針の推進と説明責任向上のために、人事部・法務・CSR・政府業務・サプライヤー管理部の複数部署横断で人権チームをつくり取組みを進め、年に一度、法務・財務・人事・内部監査部がリスクアセスメントを実施する仕組みを持つ。
⑧グローバルなサプライチェーン管理
・69%がサプライヤーに環境・社会面の管理を求めているが、研修や能力開発、インセンティブ制度を持つのは34%。
(好事例:Appleは、紛争鉱物のサプライヤーの能力開発を行い、対象鉱物の製錬・精製業者の100%に第三者監査を実施。社会・環境全体のリスク評価ツールもサプライヤーや業界同盟に共有)
・監査を実施した企業は、未実施の企業に比べ調達先決定の際に社会・環境面を考慮する比率が3倍高く、教育等のプログラムを実施する傾向が5倍高い。
⑨多様性
・2017年、100近くの株主決議で、多様性報告書の開示が求められた。
・58%は役員レベルを多様性推進の責任者に任命しているが、役員報酬と会社の多様性の指標を結びつけているのは3%。
・66%が多様性に関する従業員向け研修を実施。
(好事例:
・Intelは、マイノリティの採用を増やすために奨学金や教育プログラムに投資し、多様な人材が働きやすいよう福利厚生を充実させた。
・電力会社EVERSOURCEは、役員報酬と多様性指標を結びつけることで女性とマイノリティ採用に関する目標を達成)
⑩トップレベルのコミットがサステナビリティ推進に与える影響
・GHG排出削減の期限付き目標を持つ会社の98%は、役員をサステナビリティの責任者に任命している。
・役員がサステナビリティの責任者である企業の97%が水の使用に関する目標を持つ。
・役員報酬とサステナビリティ指標を連動させる企業は、GHG排出量と人権に関する目標を持つ比率がそうでない企業よりも2倍高い。
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好事例もいくつか上記にまとめましたが
Turning pointのウェブサイトでは
イシュー別 / 報告書のセクション別の多様な好事例や企業別のスコア表を検索することができます。