Sustainability Frontline
勇気付けられるエネルギーに関する2つの報告書
photo by BlackRockSolar
世界がエネルギー転換に向かう中で、日本の立ち遅れが顕著になっている。
外務省の気候変動に関する有識者会合から出た、
日本のエネルギー政策に対する提言の冒頭の一文です。
この提言、多くの客観的なデータと力強いメッセージで
脱炭素化に向け省エネの推進と再エネへのシフトを訴える内容で、
とても勇気付けられます。
一読の価値あり、です。
外務省 気候変動に関する有識者会合 エネルギーに関する提言
気候変動対策で世界を先導する新しいエネルギー外交の推進を
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000335203.pdf
参考:データ集
「日本を取り巻く世界の状況」のパートからいくつか抜粋してご紹介します。
●世界の現実を正しく伝えるデータと情報に真摯に向き合い、日本の置かれた状況を謙虚に受け止める。
●電力の安定供給のために、「ベースロード電源」として原子力や石炭が必要だという考え方は、すでに過去のものになっている。エネルギー市場の主役は入れ替わり、エネルギーを考える出発点が変わったのである。
●経済成長を維持しながらエネルギー消費や二酸化炭素排出を減らしていく「デカップリング」は、すでに世界規模で起きており、石炭からガス火力への転換を行ってきた英国や米国、再生可能エネルギー導入先進国のドイツなどで、長期的な傾向となっている。
●国内には、日本の産業は先進的な対策をやりつくしているため「乾いた雑巾」のような状態だ、という神話がある。
●世界的には、原子力は、高リスクで競争力のない電源であることが明らかになっているにもかかわらず、日本では、原子力が他の電源よりも安価であるという試算がそのまま使われている。
●欧州では、ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)によって蓄電池を評価する動きが出ている。
再生可能エネルギー導入に立ち遅れ、化石燃料に依存したエネルギーを使い続けることは、日本で生産される製品の評価を下げてしまう。
上記で紹介されている動きの一つに、
事業で使用する電力の100%再エネ化を宣言する
国際的な企業イニシアチブRE100があります。
現時点での参加企業は127社。
参加企業の電力消費量をすべて足し合わせると
エジプトの電力消費量よりも大きくなります。
日本企業からは、リコー、積水ハウス、アスクルに続いて
大和ハウスが最近参加を表明しました。
さらに先進的な企業は、取り組みの対象をサプライチェーンまで広げようとしています。
こちらの報告書は、先進的に取り組むアップル、BT、IKEA Range&Supplyの
3社の挑戦からの学びについてまとめたものです。
GOING BEYOND: A GUIDE TO INTEGRATING RENEWABLE ELECTRICITY INTO YOUR SUPPLY CHAIN
https://www.there100.org/sites/re100/files/2020-09/RE100_Going_Beyond_2017.pdf
世界をリードする企業として、
自社のビジネスのために排出されたCO2にも責任があることを自覚する。
それだけでなく、電力を戦略的資産と考え、再エネへのシフトに取り組むことで
価格の流動性への対策とエネルギー供給に対するコントロール権を得て、
地域での規制を先取りする。
技術は準備OK。補助金なしの価格で考えると多くの地域でも競争力は既にある。
あとは取り組みをスケールさせていくだけ。
たとえばアップルは2015年にサプライヤー向けのプログラムを開始し、
14のサプライヤーが2018年度中の再エネ100%にコミットしました。
取り組み推進に向けた10の学びがこちらです。
1.サプライチェーンの電力消費の全体像と、主要サプライヤーの再エネポテンシャルを分析する
2.野心的でファクトベースの公開目標を策定する
3.調達に関わる主要な意思決定者の支持を得る
4.サプライヤーに取り組みを促すための十分な予算を用意する
5.実現可能なことを証明するリーダーを発掘する
6.適切なインセンティブを設定する
7.達成に向けた適切なサポートを提供する
8.共通課題を突破するために高い目標を掲げる他社と協力する
9.先進企業から学び協同の可能性を探る
10.進捗とチャレンジについて報告する
以上、最近注目したエネルギーに関する2つの報告書のご紹介でした。
関心を持たれた方は是非内容に目を通してみてください。