30秒で5.4億円! 一大スポーツイベントCMで多様性を訴えた企業

2018 / 2 / 27 | カテゴリー: | 執筆者:Yurie Sato 佐藤百合枝


Photo by Lorie Shaull

アメリカ中が熱狂するアメフトの頂点決定戦「スーパーボール」が
今年も2月に開催されました。

たまたまボストンで調査中にニューイングランドのチームが決戦に参加していたため
周りが大興奮で、私はルールもわからないのに一緒に盛り上がってしまいました。

スーパーボールはアメリカの人口の1/3が視聴すると言われ
CM放送料は30秒500万ドル(約5.4億円)に及び、企業にとっても一大イベントです。
試合後はCMの話題でもちきりになり、
多くのメディアでスーパーボールCM特集が組まれます。

2018年も昨年に引き続き、トランプ政権の排他的な政策に対抗したスポンサー達が
多様性の重要性を訴えるCMを放送していたのでご紹介します。

一番反響が大きかったのがコカ・コーラのCM
多人種の家族や同性カップル、障がい者、様々な年齢の人を映し出し、
「様々な容姿、愛のかたち、好き・嫌いがあるけれど、
私たちみんな、そしてあなたのためのコーラがある」というナレーションで終わります。

ジェンダー中立な代名詞として近年heやsheの代わりに使われることが増えている
”they”という代名詞
を取り上げたことが
LGBTQコミュニティで大きな反響を呼んでいます。


写真:ツイッターより (マーケティングチームに拍手!、”them”を代名詞と認めてくれて嬉しい、コカ・コーラのようなブランドが”them”を使うのは社会にとって重要、など賞賛の声が寄せられた)

トヨタ

私のお気に入りが、宗教の多様性を強調していたトヨタのCM。

ユダヤ教の指導者が慌てて教会を出るところから始まります。
急いで説教を終えたカトリックの神父と合流し、
イスラム教徒、仏教の僧侶をトヨタの車に乗せ、スーパーボールの会場に向かい、
修道女と合流します。

お互いをからかいあうやりとりもユーモアにあふれ、
コメディのようなつくりになっているので多様性を押し付けている感じがしませんでした。

ラストで“We’re all one team”というメッセージが出て、最後まで上手だなと思いました。

(トヨタの北米事業体は、人材登用・開発、トップの関与、サプライヤーの多様性が評価され、「The Diversity Inc Top 50 List(世界の企業多様性トップ50」に10年連続でランクインしています)

T-mobile

今までJustin BieberやSnoop Doggなどの有名人をフィーチャーし
注目されていたT-mobileですが
今年は「現在の国の状態を考慮すると、もっと大切な伝えるべきことがあるのではないか?」とマーケティングチームで議論になったそうで、
多様性のテーマにしたCMを放送していました。

様々な人種・民族の赤ちゃんを映し出しながら、

「この世界にようこそ。
私たちは偏見のない心と、人は皆平等であるという本能とともに生まれてくる。
他人に自分との違いを見つけると脅威を感じる人もいるかもしれないけれど、
あなたのことを止められる人はいない。

愛したい人を愛し、公平で平等な賃金を要求し、
自分の出身地域によって可能性を制限されることなく生きていく。
あなたの意見は社会に届くし、あなたは一人ではない。

私たちと一緒に、変化を起こしていかないか?」

というコメントが力強い声で語られます。

T-mobileの従業員は、62%がマイノリティ、42%が女性で構成されています。
LGBTQに対する差別撤廃取り組みを評価する「Corporate Equality Index」でも
5年連続で満点
を獲得する多様性先進企業です。

昨年、多様性を尊重するCMを放送した企業に対してトランプ支持層から不買運動も起こり
企業が広告を通して政治的な主張をすることに反対する声もあります。

それでもこのような主張をする企業が減らない背景には
設立者や組織の想いとして「移民と自由の国アメリカ」を大切にしたい企業もあるようですが
自社が多様な消費者に受け入れられ、多様な人材を雇用していかないと
事業が成立しないばかりでなく、
排他的な政策で国全体の多様性が失われ
米国企業の競争力が落ちる可能性に本気で危機感を抱いているのかなと感じました。

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