平和への道のりの裏側で セメント企業の武装勢力への資金供与問題

2018 / 1 / 11 | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

Kurdish YPG Fighter
photo by Kurdishstruggle

昨年10月に「首都」ラッカが解放され、12月にはイラクのアバディ首相が勝利を宣言、
シリアで支配下にあるのはごく一部の地域を残すのみと、
3年間におよぶ支配を終えた「イスラム国(IS)」。

ただこれですべて終わったわけではなく、
ISが支配地域に残した傷跡をどう修復していくのか、
また世界に拡散した過激思想への対応も大きな課題です。

近年の中東での状況は、企業にも様々な問題を投げかけました。

たとえば知らない間に紛争に関わってしまうケースにどう向き合うのか。
ソニーのカメラがガザ空爆に「加担」?

2013年にアルジェリアで日揮の社員が犠牲になった事件は
政情が不安定な地域における危機管理の難しさを企業に突きつけました。

現在大きな問題になっているのが、
スイスに本社を置く大手セメント生産会社ラファージュホルシムによる
「イスラム国(IS)」への資金供与疑惑です。

2015年、合併前のフランスのラファージュが
シリアのセメント工場の操業を継続するため、
ISなどの武装勢力や制裁対象となっていた組織に
不正に資金を提供したとされています。

仲介者などに「税金」を払ったり、制裁対象となっていた石油を渡すなど、
2012年から工場が操業を停止する2年間で
間接的に提供された金額はおよそ500〜600万ドル相当。

テロ組織への資金供与や他人を危険に陥れたことへの罪などが問われており、
現在はフランス本社もその状況を把握しながら黙認していたかどうかを解明するため、
前トップをはじめ旧経営陣に対する聴取が始まっています

紛争化にある地域での事業継続にあたっては、
ビジネスの観点や倫理的・道義的な観点から難しい判断が迫られることはよくわかります。
何か起きる前に利益のためにお金を支払うのはなしだが、
何か起きた後に人命のために支払うのはありなのか。
アフリカのある地域での事業継続に際して、日本人の駐在員が引き上げ、
後任にインド人が就いたという話に違和感を覚えたこともあります。

何が正しいのか、私は危機管理の専門性はないので明確な答えは持てていませんが、
利益追及を第一とし、紛争の原因となっている相手にお金を払って
安全を買うといった易きに流れることだけはすべきでないということはわかります。

そしてそれは、軍事マーケットに積極的に参加しようとする
最近の日本の政府および企業に対しても同様のことを感じます。

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