Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
資源循環・廃棄物に関する動き 〜世界の都市から
Photo by Tony Webster
2015年から、毎月、世界の約30の都市や国際機関、ニュースメディアの廃棄物や資源循環に関するリサーチを行い、内容を日本語で要約しています。
約3年に渡って調査を続ける中で見えてきた
廃棄物に関連する各都市の特徴的な問題や取り組みをご紹介します。
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●ニューヨーク市 (NYC)
「2030年までに埋立ごみゼロ」を掲げるNYCは
約4年おきに短期戦略も策定しながら取り組みを行い、進捗を年次報告書で公開しています。
資源回収方法の簡略化、リユースの促進、職員のトレーニング拡充など
12目標・46戦略を掲げ、
有機廃棄物の拠点回収や中古品の寄付・入手を促進するプログラム、
アパートや道路脇での電子廃棄物回収などを実施しています。
また、都市として世界で初めて
パリ協定に即したGHG削減に関する計画も発表しており、
廃棄物削減も計画の柱のひとつとなっています。
NYのGHG削減計画の廃棄物に関わる目標の例(計画P20-21)
この計画では、項目別に
「関連セクター・推進主体・GHG削減量・必要投資額(公的・民間)の規模」
を開示し(写真左)、
市の包括的な社会・環境長期目標「OneNYC:強固で公正な都市をめざして」で掲げる
「成長」「公平性」「持続可能性」「レジリエンス」への貢献度(写真右)も示しています。
●ニュー・サウス・ウェールズ州 (NSW)
豪州のNSWでは、飲料メーカー企業が実施コストを一部負担する容器保証金制度が
2017年から開始されました。
飲料容器を返却すると容器1本あたり10セント(約10円)が返金されるしくみで、
これによりポイ捨ての半分近くが減る見込みです。
空の飲料容器の返却は、自動返却機、カフェや食料雑貨店等の店頭、量が多い場合は自動倉庫でも受けつけています。
自動返却機の場合、返金方法は、PayPal口座への送金、現金や商品券での受け取り、NPO等への寄付の中から選ぶことができて、
約170円以上の寄付には、課税控除のための領収書も発行されます。
●北京市
2017年に、汚染廃棄物の排出が許可制になり、排出できる廃棄物量に上限が設けられました。
この措置は2020年まで続く予定で、
対象となる企業や公的機関は、廃棄物量、廃棄場所、汚染物質の種類を開示する必要があります。
●ジャカルタ市
ジャカルタで興味深いのが、ユニリーバ・インドネシア財団が開発した「ごみ銀行」。
学校や役場にあるごみ銀行に市民が古紙やプラスチックなどを持ち込み、
ごみ通帳に資源ごみの時価相当額を記録していきます。
銀行はごみをまとめて業者に販売し、その利益が住民に分配されるしくみです。
(ごみはまとめて売却することで利益が高まる)
2015年には3,700t以上のごみを回収し、
約2,800万円の利益を生み出しました。
廃棄物削減と住民の生計向上のために、行政が普及の加速に注力しています。
●ダッカ市
多くの途上国地域同様、バングラデシュには総合的な廃棄物管理のしくみが存在せず
毎日発生する6,000tのごみの半分が回収されず道路や排水溝に投棄されているとのこと。
アパレル産業から発生する廃棄物・汚水も深刻で、
有害な皮なめし廃棄物を家畜の餌にする業者が多く人間への健康被害が懸念されています。
化学物質の川への垂れ流しも問題になっており、
H&M、Gap Inc、Kappahi、Tesco、Primark、Gstar等が参加する「PaCT」という業界団体が工場における化学物質の使用等に関する管理実験プログラムを実施しています。
近年、海外から送られてくる電子廃棄物も急増し
子どもを含む貧困層の人々が危険な環境で回収・リサイクル作業を行うなど
人権に関わる問題も多く起きています。
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