社会的投資の力でソーシャルビジネスを支援

2017 / 10 / 4 | 執筆者:Yurie Sato 佐藤百合枝

9月、英国に社会的企業や社会インパクト投資の調査に行ってきました。

社会投資分野で世界的リーダーになることをめざす英国は
税制優遇策等を通して
機関投資家だけでなく個人投資家が社会投資をしやすくし、
多様な社会投資を拡大させるための環境整備を進めています。

社会投資のひとつに
社会問題解決のための資金調達を目的とした債券「ソーシャルボンド」があります。

日本でソーシャルボンドというと
JICA債など規模が大きなものを想像する人も多いかもしれませんが
様々な規模の社会投資が広がる英国では、
ソーシャルボンドを活用して活動資金を調達するNPOもいます。

英国では、ここ5年ほどで
ソーシャルボンドが通常の債権と同等のリターンが確保できるという認識が広がり
最近では社会課題に対する人々の関心の高まりも相まって、
応募超過も起きているそうです。

ソーシャルボンドを活用して
社会的企業の事業の立ち上げ・育成支援を目的とした”Future business center“を運営する
NPOの活動をご紹介します。

Future business center

このセンターを運営するNPO Alliaは、
「インパクト投資」、「社会的企業家の支援」、「オフィススペースの貸出し」を
事業の3つの柱としています。

企業支援については欧州地域開発基金の支援を受けながらも、
建物の運営は、債権(インパクトボンド)の運用により自立しています。

Alliaが運営するFuture business centerの支援対象は
社会的インパクトを生み出すことが活動の中心であり
インパクトの創出を継続できる組織で、
営利/非営利を問いません。

スマートシティや代替エネルギー関連など環境分野の企業が多く、
ビジネスアイデアを思いついたばかりの人から
既に立ち上げた事業や技術の実証化や加速化をしたい企業など
様々な事業段階の利用者がいます。

技術開発のための実験ができる部屋や
オフィス・会議室を市場価格より安く・または無料で貸し出し、
専門家が事業運営に関するアドバイスを提供します。

「イノベーティブなアイデアを持っている企業でも
それを社会に浸透させてインパクトを与えるまでに成長するのは非常に難しい。
新しいアイデアに対して批判的な人やすぐ諦める人が多い中で
持続可能なソーシャルビジネスを育成し
ソーシャルビジネスの地位を確立させることがこのセンターの目的」

とコミュニケーション担当のHelen Harding-Male さんは語っていました。

このセンターの特徴として
社会投資の活用だけでなく、
テナントである企業や地域の人々の協力により
建物を一から自分たちでつくることで建設コストを安く抑えている点があります。

たとえば、この窓のオレンジの部分はソーラーパネルですが
テナントの企業が安く提供してくれたそうです。
この他にもテナントのノウハウを活用した雨水の循環利用や、
空気を循環させてエアコンは導入しないなど先進技術が低コストで取り入れられています。
このセンターに賛同した建築業者の人々が無料で建設に協力してくれたこともあるといいます。

また、このセンターでは
“Openness, connectivity, relationship”
を大切にしており、
このセンターで成長した企業が事業を立ち上げたばかりの人々にアドバイスをするなど
起業家同士の情報交換や助け合いを奨励しています。

支援を受けてセンターを出て行くという直線モデルではなく
自分が成長したら、センターの他の起業家に還元をするような
循環型のビジネスモデルをめざしているといいます。

日本でもインキュベーションセンターは増えていますが、
公的な資金に頼っている組織が主です。

社会投資や人々のつながりの力を使って
自分たちのサステナビリティを確保しながら
ソーシャルビジネスを持続可能にすることをめざすFuture business center。
こんなビジネスモデルを英国中に広げていきたいそうです。

Future business centerのロビー。このセンターでは起業家同士が情報交換しやすいように、キッチン、テラス、オフィスともになるべく区切りがないつくりになっている

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