Sustainability Frontline
広がる水ATM インドで成功するBOP×CSRモデル
途上国で展開する社会貢献プログラムを単発で終わらせず、
持続可能なモデルにしていくためには何が必要か。
今少しお手伝いしているプロジェクトのヒントになればと思い、
インドの社会起業Waterlife Indiaの話を聞いてきました。
企業からの寄付資金を元に浄水設備を設置し、
地域に安価に水を販売することで持続的な運営を実現する
CSR+BOPともいえるこのモデル。
地域社会に与えるインパクトは大きく、その複製可能な方法が注目され、
現在ではインド15州で4500の設備を運営するまでになっています。
ステップはこう。
きれいな水が供給されない貧困地域を特定
↓
地方政府に土地利用、水の汲み上げ、電気の利用に関する協力を取り付ける
↓
きれいな水の必要性を住民に教育し、利用者のプレ登録を募る
↓
政府または企業の資金を元手に浄水設備を設置
↓
利用者に対し容器1杯ごとに課金するモデルで安価に水を販売
(1割ほどの利用者には配送サービスも提供)
↓
売上により運営・メンテナンス費用を賄い、スタッフには地域住民を教育して雇用
↓
費用の一部は地域の健康・衛生教育活動にも充てられる
↓
10年にわたって維持管理を約束
同団体は様々な企業とパートナーシップを結んでおり、
たとえばスズキの子会社 Maruti Suzukiはこの1年で4基を設置しました。
https://www.marutisuzuki.com/press-release-16-july-2016.aspx
こちらは独のBASFの映像です。
10層フィルターにより浄化された水の販売価格は20リットルで7ルピー。
市販の水は40ルピーということを考えると格安で、
紅茶いっぱい分の値段とほぼ同じです。
日本に住んでいる感覚では、これなら絶対に買う、となりますが、
それでも大切なのは住民への教育だと言います。
変化の鍵となる子どもと女性にターゲットを絞り、教育活動を展開。
さらにWaterlifeの場合、設置前に利用者のプレ登録を行い、
顧客基盤を作ってからスタートすることでリスクを減らすという
アプローチをとっています。
清算はすべてプリベイド式のカードで電子化されており、
細かな顧客ニーズの分析も可能です。
きれいな水が安定的に利用でき、病気にかからず
健康に生活を送ることができるようになるメリットは大きく、
世界銀行からビジネスモデルとインパクトについて分析した
レポートも出ています。
Waterlife: Improving Access to Safe Drinking Water in India
http://documents.worldbank.org/curated/en/586371495104964514/pdf/115133-WP-P152203-PUBLIC-17-5-2017-12-28-1-WaterlifeCaseApril.pdf
インドでは2014年から一定規模以上の企業に対し、
過去3年の平均純利益の2%を事前活動に寄付することを義務付ける法律ができています。
(現在は社会起業も対象に拡大)
義務化により地域のニーズとかけ離れた活動が行われる、
汚職に利用される、などの懸念の声もあがっていますが、
Waterlife Indiaは社会の流れを機会としてうまく活用しながら、
地域の社会課題に根ざすニーズを着実に市場に育てるモデルにより活動を加速させています。
photo by Milaap.org