自動車、ホテル業他、サプライチェーン上の倫理的な人材採用にコミット

2017 / 9 / 7 | 執筆者:Yurie Sato 佐藤百合枝


Photo by U.S. Department of Agricuture

フォード、GM, マリオットホテル、ホーメルフーズ、マイケルコーズの5社は
企業責任を求める宗派間センター(ICCR)に対し、
奴隷労働をなくすために不可欠だと言われる”No fees”方針*を
サプライチェーン上で取り入れることを約束しました。

”No fees”とは、
仕事を見つけることに必死な労働者に対して
仕事を得るためにお金を払わせることを禁止する国際的な取組みで
英国の「人権とビジネス研究所」やNGO 「KnowTheChain」など
様々な主体が推進しています。

労働者が違法な人材紹介会社に手数料を払って紹介された仕事のほとんどは
正式な契約書類がないため
個人の意志で仕事をやめることが許されなかったり、
約束通りの賃金を支払われないことが多く、
強制労働の原因になっています。
(参照:http://www.iccr.org/sites/default/files/iccrsnofees-promotingethicalrecruitment2.pdf P2)

このようなリスクが最も高いのがバングラデシュのアパレル業界ですが、
大手のアパレル企業で、”No fees”方針を取り入れているのは、
6社のみです。(P11参照)

アパレル企業以外でリスクが高いのが
今回コミットを行った食品、自動車、サービス企業(ホテル等)で
主な被害者は移民労働者です。

今回のコミットを実現させるために
企業に働きかけを行ったICCRには300の宗教団体が加盟しており、
資産総額は2,000億米ドル(約23兆円)に上ります。
(米国では、宗教団体は寄付をもとに投資を行う巨大な機関投資家と認識されている)

より多くの企業がサプライチェーン上での採用方針を改善するために、
ICCRは企業向けの好事例集も発行しています。

事例集に取り上げられている企業の活動を見てみると
たとえばHPは、
人材派遣会社を使用した雇用はリスクが高く、透明性を確保ができないため
全サプライヤーに対して移民労働者を直接雇用することを求めています。
人材紹介会社の使用はOKですが、
労働が始まった時点で、直接雇用に移行する必要があります。

HPはサプライヤーに対して
直接雇用モデル(No feesモデル)に以降するためのガイドを作り
その実施状況について高リスク地域から順番に監査を実施しています。(事例集P21-23)

英国の現代奴隷法に続いて
オーストラリアでも同様の法制化に向けた議論が進んでいますが
国際NGOウォーク・フリー財団の
強制労働に関する調査によると
2016年、強制労働者や奴隷状態にある人は
2014年に比べて25%増加しています。

国際NGOウォーク・フリー財団では
強制労働をなくすには、サプライチェーン上で持続的な取組みを行うことが不可欠
とコメント
しています。

ーーーー
ICCRの他にも、サプライチェーン上の倫理的な人材採用に取り組むイニシアティブは複数あります。
代表的なものが以下。
The Leadership Group for Responsible Recruitment
(責任ある雇用に向けたリーダーシップグループ:コカ・コーラ、HP、IKEA、ユニリーバが設立)
・The Consumer Goods Forum’s Forced Labor Initiative
(消費財業界の強制労働に関するイニシアティブ)
The Electronic Industry Citizenship Coalition’s Responsible Labor Initiative
(EICC、強制労働撲滅のための責任ある労働イニシアチブ)

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