Sustainability Frontline
BMWのエンゲージメント方針にみる対話の作法
photo by Jon Curnow
今日は以前から注目していた独BMWのステークホルダーエンゲージメント方針について
ご紹介したいと思います。
BMWでは、専門家と学生、2つの形式でのダイアログを世界各地で展開しています。
モビリティの未来を考える、未来志向の会。
その考え方のベースとなっているのが、ステークホルダーエンゲージメント方針です。
Stakeholder Engagement Policy of the BMW Group
ステークホルダーエンゲージメントのガイダンスとしては
AcountAbilityによるAA1000シリーズがありますが、
企業が独自に対話に関する指針を出しているケースは珍しいです。
(ステークホルダーごとの基本姿勢を書いていることはありますが)
方針は以下の項目で構成されています。
1.目的
2.ステークホルダーの特定
3.レベルと方法
4.リスク
5.プロセスとコミュニケーション指針
6.価値とアウトプットの測定
7.担当者
社会から操業の許可(license to operate)を得て、競争力を高め、
長期的に成功するためには、ステークホルダーと積極的に関わっていくことが不可欠。
そのためにステークホルダー資本を最大限に生かす、とあります。
興味深いのは、リスクについてもちゃんと考慮しましょう、と述べていること。
どのようなリスクがあるかというと、
・参加疲れ
・ステークホルダーの誠実さの欠如
・利益相反
・議論を壊すステークホルダー
・対話の意思の欠如
重要なステークホルダーであるけれども、
相手に資金や言語の壁といった障害がある場合には
必要なサポートを行うことも明記しています。
対話中に大切なことのひとつが
「企業として準備が不十分な項目については約束をしない」こと。
企業側はこの前提を明確にし、ステークホルダー側も受け入れることで
表面的な議論にとどまらない対話ができるようになります。
そして最後には、本社の担当者ということで、4名の名前と連絡先が明記されています。
表面的なアリバイ作りや、否定のしあいで終わらないためにも、
対話に関する指針を明らかにし(かつステークホルダーとも合意しておくことは)、
こうした場に社内を巻き込んでいく上でも重要なことだと考えます。
今回、なぜこのテーマを取り上げたかというと、
WWFが2月に発表した「100%自然エネルギーシナリオ」に関する議論を目にしたからです。
発表したシナリオに対し、国際環境経済研究所の研究員から問題点の提示があり、
それに対してWWFからの回答、さらに回答に対するコメントが出されています。
一連のやり取りのなかで、残念だなと思ったのが、
問題点の提示が否定から入り、前向き・建設的な対話の意思をあまり感じられなかったこと。
長期の社会像をどう描いていくかという大きなテーマこそ、
積極的に向き合い対話していこうという姿勢を大切にしたいです。