「観る」から「感じる」観光へ ブラジルでの経験から

2017 / 5 / 6 | カテゴリー: | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

4月後半から約10日間、ブラジルに行ってきました。

年に1度を目標にしている長期休暇&フィールドトリップの一環です。
訪問先は、リオ、サンパウロ、そしてアマゾン。

しっかりリフレッシュでき、色んな気づきや発見もあったのですが、
今回は特に印象に残った地域を2つご紹介。

1つは、アマゾンのマミラウア自然保護区。

世界自然遺産に登録されている地域内にあり、生物多様性の保全や研究のほか、
コミュニティの人々の持続的な暮らしにも寄与するエコツーリズムを行っています。

4月は雨季(浸水期)のシーズン。辺り一面は水浸し。

この地域に生息する動物は、雨季にはすべて水面に出ている木の上で暮らします。
人々も、高床式の家や水上に浮かぶ家で暮らし、移動はすべて船です。

といってもその規模は想像以上で、深さは7~15mに達し、
浸水範囲は日本の面積よりも広い地域に及ぶこともしばしばです。

ツアーは水上に浮かぶエコロッジを拠点としながら、
ボートやカヌーで大自然の中を移動し、生き物観察を行うのですが、
実はその下には10m近い木々の森が広がっているという状況です。

ロッジのスタッフやガイドを周辺の村の住民が交代で担っていて、
地域を保全していくことが収入にもなり、
資源の持続的な利用と人々の暮らしの向上につながっています。

もう1つが、リオに無数に広がるファベーラ。
たくさんの家々が山の斜面に所せましと建てられた、市内各所に点在するスラム街です。

麻薬組織の拠点となっていたファベーラの一つに警察が本格的に介入したのが、2008年。
安全がもたらされ、これまで法律も適用されなかった地域に法が入ったことで、
人々の暮らしも変わり始めました。

その後、オリンピック・パラリンピックに向けて対策が進められ、
他地域の治安も改善されていったのですが、大会後は政治の混乱もあり麻薬組織の力が復活。
安全と言われていた地域でも発砲音などがまた聞こえるようになってきているそうです。

訪れたのはサンタマルタというマイケル・ジャクソンがPVを撮影したことで有名な場所。

私は今回は現地をよく知る方の案内で訪れたのですが、
ここには観光案内所が設置され、コミュニティ出身のガイドが案内してくれます。

上の2つが特に印象に残った理由は、外から「観る」のではなく、
中に入って「感じる」ことができたから。

他にも豪華な水上船に滞在しながらアマゾン川を遊覧するツアーや、
ホテルからワゴンに乗ってファベーラを回るツアーもあります。

色々な観光の形があってもちろんいいですが、
自然や地域、文化を「消費」して終わりではもったいないし、持続的ではありません。
民泊を提供するAirbnbが「宿泊」に続いて「体験」を提供するサービスを開始するなど、
体験型ツーリズムに対する需要も高まっています。

折しも2017年は、国連の「開発のための持続可能な観光の国際年」。

地域住民が主体的に参加でき、自然に負荷をかけず、文化や多様性を尊重しながら
相互理解や平和をもたらす観光を目指します。

GDPに占める比重は増加を続け、今後も成長を続ける産業として国際的に注目が高まる観光。

持続可能な開発目標(SDGs)でも、地域の雇用創出や文化振興、
経済貢献につながる観光の促進がうたわれています。

受け入れ側はもちろん、観光する側も、意識を高めていく必要があります。

(日本人的な感覚で一言でいえば、「入らせていただく」「お邪魔させていただく」気持ちを
忘れないというところでしょうか)

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