カーボン・プライシングに関するスティグリッツ教授のお話と2050低炭素ビジョン

2017 / 4 / 4 | カテゴリー: | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

環境省から2050年に向けた長期低炭素ビジョンが発表されました。

長期低炭素ビジョン
http://www.env.go.jp/press/20170316/105169.pdf

脱炭素化のために、従来の延長線上ではない、抜本的な削減が必要なこと。

実現にはイノベーションが求められ、
そこには技術だけでなく社会システムやライフスタイルも含み、
さらには経済成長や地方創生、少子高齢化の課題解決にもつながる
変革が求められることが提言されています。

長期の大幅削減を実現するための主要な施策として議論されているのが、
炭素の価格付け(カーボン・プライシング)です。

先日、検討委員会の最終会合で米ノーベル経済学者のスティグリッツ教授の
カーボン・プライシングをテーマにした講演を聞く機会がありました。

資料:The Environment and the Economy: Working Together
http://www.env.go.jp/press/y0618-14/mat02-2.pdf

(財)持続性推進機構理事長の安井至さんのブログにわかりやすい解説があります。

スティグリッツ教授の炭素税
http://www.yasuienv.net/CarbonTaxS.htm

主なポイントは
・炭素税は経済を刺激し需要を創造する
・現在の「需要がない」状態では特に有効(消費税は需要を減らす)
・炭素価格を導入することで、あらゆる分野で低炭素化に向かう、
投資と消費のパターンが変わる

炭素予算(2度未満に抑えるために残されたCO2排出量)が残り1兆トンしかないなかで
経済成長を実現するためには、少ない炭素の投入量で生産性を高める必要があります。

生産性を測る指標として目指すのは、従来の労働力あたりではなく、
炭素あたりの「炭素生産性」。

2050年までに目指すのは、それを現在の6倍に高めること。

そして90年代前半はトップに近い位置にいた日本の炭素生産性は2000年以降、
北欧諸国や独英仏に抜かれ、現在は米国に迫られつつある状況
です。

大きな社会・経済の変化を後押しするためにもカーボン・プライシングの議論を
早急に進めてほしいと思います。

脱炭素化を実現するための主な手段に、再生可能エネルギーの推進があります。

約90社の海外企業が参加する、自然エネルギー100%利用を目指す「RE100」。
日本企業の参加はまだありませんが、国内ではユニリーバが世界中の事業所に先駆けて
2015年に100%を達成しました。

また味の素は3月末、日国内事業所で100%を達成し、
2030年には50%まで再エネ比率を高める目標を発表しています。
https://www.ajinomoto.com/jp/presscenter/press/detail/2017_03_22.html

再エネの普及にあたって障害の1つとされる変動する発電量の電力系統への導入については、
昨年九州電力では1日の時間あたりの最大受け入れ比率78%を達成したそうです。
(1日でも38%)

78%の再生可能エネルギーを運用して見せた日本の技術力http://www.wwf.or.jp/activities/2017/03/1358803.html

変化は着実に進んでおり、将来進むべき道筋も明らかになっています。

インフォグラフィックスと英語概要版の制作をお手伝いさせていただいた
自然エネルギー100%に向けたシナリオも低炭素長期ビジョンとあわせてご覧ください。

WWF脱炭素社会に向けた長期シナリオ
http://www.wwf.or.jp/activities/climate/cat1277/wwf_re100/#energyscenario2017


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