Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
家畜の動物福祉のいま 〜世界と日本の視点
Photo by United Soybean Board
アメリカでは、
2016年の11月から現在までに
StarbucksやChipotleなど米国の大手食品関連企業の約10社が続けて
自社とサプライチェーンのニワトリの扱いに関する方針を打ち出しました。
各社とも
非営利団体Global Animal Partnership(GAP)のプログラムへの準拠を目指し
2024年までに
身動きができないほど狭いケージの使用をやめ、
輸送中や屠殺の痛みを軽減することや
ホルモン剤などを使用して体を無理やり大きくしない
ことなどにコミットしています。
狭いケージの使用については
アメリカのNGO Humane Societyのよびかけに対して
すでに100以上の食品メーカー、レストラン、ホテルなどが
早い企業では2016年
遅い企業でも2026年までにやめる目標を打ち出しています。
家畜動物の福祉全体に関する動きをみてみると
2017年1月に発行された
世界の99企業が対象の畜産動物福祉に関するベンチマーク(BBFAW)2016年版では
2016年の投資家宣言を受けて
より真剣に取り組む企業が増えているようです。
(※「動物福祉」については過去記事をご覧ください)
上から「コミットメントと方針」「ガバナンスとマネジメント」「イノベーション」
「情報開示」「総合スコア」
に関する2012-2016年の評価(P25)
87%が動物福祉を重要な経営課題と捉え、
65%が目標を設定、45%がマネジメント体制を開示し
約半分の企業の総合評価が昨年に比べて向上しました。
全体的なトレンドとしては
1) NGOのキャンペーンが活発な動物(ニワトリ)に対する活動が多く、
目標の達成年は10年後など長期で設定されている
2) 自社にとって特に重要な原料に対してサステナブル調達目標を設定する企業が増えており、
その中に動物福祉が含まれること増えている
の2つが挙げられていました。(P56)
動物福祉を推進する動きとしては他にも
2016年12月にISOが家畜動物の管理方法を改善するための技術仕様を公表したほか、
フランスは2017年1月、家畜動物管理の透明性を高めるため屠殺場にカメラを設置する法案を可決し、
英国では動物福祉のラベルの義務化を求める声が高まるなど
様々なレベルでの取り組みが活発化しています。
しかし、東京都市大によると
日本の一般市民323人を対象にした調査で
「動物福祉」という言葉を知っていた人はわずか1人。
食肉や卵を扱う48の日本企業・組織を対象とした調査では
「担当者がいない」「対応を検討しはじめた段階」
「取引先との関係があるので難しい」などの理由から
「回答しない」または「社名非公開」を選んだ企業がほとんどになっています。
回答をした12社のうち
・動物福祉を事業に関わる課題と認識しているのは10社
・家畜の動物福祉に関する指針を公表しているのは2社のみ
でした。
日本企業はまだBBFAWの対象ではありませんが
BBFAWは、アジア全般の取り組みが遅れていることを指摘しており
今後ベンチマーク対象を増やし、さらに詳細な分析を行うとしています。
地域別の取り組み状況(P31)
BBFAWでは
消費者の意識が低い地域では、
企業がシステム転換にかかる費用を
動物福祉に配慮した商品の売上で補いにくい点を指摘しています。
しかし、過密な飼育環境では感染病が広がりやすかったり
過剰な抗生剤の利用は耐性菌の発生にもつながることなどから
(世界の抗生剤利用の半分は家畜に使用されている)
動物福祉に取り組むことは、長期的な経営リスクの軽減や、
社会の食の安全に対する期待に応えることも強調しています。(P11,47)