Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
本当に必要な次世代育成とは? VISAの金融教育から考えたこと
クレジットカード最大手のVISAと
経済教育に取り組むNPOジュニアアチーブメント(JA)が協同で、
2016年3月に欧州で若者の金融教育に関する調査を行いました。
その結果、若者側のスキルと雇用側のニーズには
大きなギャップがあることが判明。
特に「財務計画」と「予算管理」のスキルが、
雇用者側の求めるレベルに対して大きく不足していることがわかりました。
Business confirms young people are not equipped with key financial skills they need to start their working lives
http://jaeurope.org/medias/news/251-business-confirms-young-people-are-not-equipped-with-key-financial-skills-they-need-to-start-their-working-lives.html
そうした状況に対し、VISAはJAとのパートナーシップのもと、若者に対して
金融リテラシーと雇用される能力(エンプロイアビリティ)を高める
様々なプログラムを世代別に展開し、
また同社の従業員も専門的な知識を活かしてボランティアで講師として活動しています。
Visa supports financial education for youth
http://www.ethicalperformance.com/bestpractice/article/205
このような取り組みだけ見れば、日本でも色々な事例がありますが、
私が特に関心を持ったのが、こうした分析や活動のなかに、
雇用される能力といった現実社会で役立つ実務的な視点があること、
さらにはところどころで長期トレンドの視点が含まれていることです。
金融の世界では、電子決済の一層の普及などデジタル化(Digitisation)が進んでいきます。
そうしたトレンドを踏まえ、調査の報告書では、将来は上記に加えて
・雇用される側では「分析と計算」
・雇用する側では「経営管理とマネジメント」
が重要になると指摘しています。
また提供する教育プログラムのなかには、
eコマースをテーマにしたものなど、デジタル化を踏まえたものもあります。
2008年の金融危機以降、金融教育は
個人が生きていく上での重要なスキルの一つと認識され
各国で取り組みの強化が進められてきました。
加えて日本では、少子高齢化社会において
政府に依存しない自立した人生設計ができるようにとの観点、
また少額投資非課税制度NISAや確定拠出年金制度など
個人が金融に関わる機会が増加していることなどを背景に、
金融教育の重要性が叫ばれています。
同時に、クレジットカードや電子マネーが普及してキャッシュレス化が進み、
お金が一層「記号化・情報化」していく社会において、
またフィンテックの発展によりこれまでにない金融サービスが登場する社会において、
これから必要な「金融教育」とは?を考える視点もとても重要ではないかと思うのです。
日本では「次世代育成」をCSRの重点課題に掲げる企業が多く、
また大多数が出張授業などの教育支援プログラムを提供していますが、
そうしたトレンドの視点が見えることは少ないため、VISAの取り組みから新鮮な印象を受けました。
IT化や機械化、グローバル化に伴い、経済や社会の仕組みが劇的に変化しているなか、
未来を生きる子どもたちにとって、本当に意味ある教育支援のあり方とは何か、
一度立ち止まってしっかりと考えるべきなのではないか。そんなことを考えました。
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