Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
たばこ産業への逆風
Photo by Rusty Clark
ウルグアイ政府は健康保護の観点から
2010年にたばこの大規模な広告を禁止し
パッケージに健康被害の画像を入れることを義務づける法律を制定しました。
たばこメーカーフィリップ・モリスは
貿易協定で保護されている知的財産権(たばこの商標)を
ウルグアイの法律が侵害したと主張し
有害性表示の義務化によって受けた損害に対する賠償を求めていましたが
世界銀行の紛争解決機関は、7月に
フィリップ・モリスの請求を却下しました。
ウルグアイでは、たばこのパッケージの両面の80%に
健康被害の警告をつけることが義務付けられているほか
「ライト」などといったたばこの健康リスクを軽視されるような表示も
禁止されています。
これらのコストにより、
同社はウルグアイで販売していた12種類のうち7種類のたばこを引き揚げを決定しています。
フィリップ・モリスは、ブリティッシュ・アメリカン・タバコとともに
EUでも「たばこの健康被害を表示することを義務付けたEU指令が不当である」
として訴訟を起こしていましたが
(この訴訟には、JT international、Imperial Tobacco Group、Gallaher Groupも関係人として参加)
欧州司法裁判所は5月に「EU指令に違法性はない」との判決を下しました。
このEU指令では
・たばこパッケージの両面の65%以上に写真付きで健康被害を表示すること
・口当たりを良くするための添加物を禁止すること
(メンソールは2020年まで販売可能)
などが定められており
今回の裁判により
EU全加盟国全で上記のEU指令が発効されました。
このようなたばこのパッケージはオーストラリアでも導入が決定しているほか、
シンガポールや南アフリカなどでも導入が検討されています。
たばこ産業に対する逆風が見られるのは
販売に関する規制だけではありません。
ESG投資における動きを見てみると
フランスの大手保険会社アクサグループは、
たばこによって世界で年間600万人が亡くなっており
たばこによる社会的コストは
戦争やテロ対策予算を足したものと同額であることから
5月に総額18億ユーロのたばこ産業からの
ダイベストメントを決定しました。
2000年からたばこ産業への投資を中止している
米最大の年金基金カルパースは
このダイベストメントによって発生した機会損害が
2014年までで30億ドルに上っていることから
たばこ産業への投資再開が憶測されていましたが、
5月にダイベストメントの継続を発表しました。
しかし、今回たばこ産業への再投資についての検討期間を当初の1-2年から
半年から9ヶ月に短縮する方針も明らかにしています。
検討期間の短縮について
「社会的コストの大きさや市民への健康被害を考慮し、
年金基金はこのような産業と関係を持つべきでない」として
複数の健康団体や政府官僚からの批判が相次ぎ、
カルパースのスポークスマンは
「検討期間の短縮は、たばこ産業への再投資の意思を示すものではない」
とコメントしています。
ーーー
参照:
ウルグアイの法律、訴訟
http://www.triplepundit.com/2016/07/uruguay-wins-lawsuit-vs-phillip-morris-tough-tobacco-rules/
欧州での訴訟
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A62014CC0547
http://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2016-05/cp160048en.pdf
アクサのダイベストメント
https://www.axa.com/en/newsroom/press-releases/axa-divests-tobacco-industry-assets
カルパース たばこ産業のダイベストメント
http://in.reuters.com/article/calpers-tobacco-idINL2N18D1QK
http://www.wsj.com/articles/tobacco-gains-prompts-fund-to-reconsider-investment-strategy-1461914447
Sustainability Frontline もっと学びたい方へ
この記事で取り上げたテーマについてより詳しく知りたいという方は下記よりご連絡ください。より詳しい内容理解 / 勉強会でのライトニングトーク / 社内セミナーでの話題提供など、一緒に学びを深める機会を作っていきたいと思います。