これだけは知っておきたい 木材DDのポイント

2016 / 8 / 30 | カテゴリー: | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

Big timber
photo by AdamKR

2016年5月。日本でクリーンウッド法
(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)が成立しました。
1年後の施行に向けて、関連法令の整備が今後進んでいきます。

2016年6月。東京オリンピック・パラリンピックにおける
木材の調達基準が発表されました。
1月に発表された調達コード基本原則を具体化した基準の第1弾で、
関心の高さが窺えます。

8月の山の日には、NGO主催による
米国・欧州の状況を学ぶ木材デューディリジェンスに関するセミナーがあり、
参加をしてきました。

自身の整理も兼ねて、それぞれの特徴や要件、
学びを簡単に整理してみたいと思います。

●国内における要求事項

1.クリーンウッド法
・合法伐採木材等を利用するよう努める(努力義務)
・対象は木材関連事業者(建設、紙、家具なども含む)
・登録制で、登録すると「登録木材関連事業者」と名乗れる
・デューディリジェンスの義務規定、罰則なし

詳しくはこちら→

2.東京オリンピック・パラリンピックの木材調達基準
・対象:建設材料・家具として使用される各種木材、建設用の型枠合板
・留意すべきイシュー:
 −原産地での適切な手続き
 −中長期的な森林経営
 −伐採における生態系保全、先住民・地域住民への配慮、労働者の安全対策
・FSC、PEFC、SGECの認証材であれば原則OK
・国産材を優先的に選択することを推奨

詳しくはこちら→

●海外における状況

それでは、進んでいるとされる欧米では、
どのような状況なのでしょうか。

米国では、2008年にレイシー法(違法な動植物の取引を規制)
の対象に木材・木材製品が追加されました。

EUでは、2013年からEU木材規制(EUTR)が施行されています。

日本との大きな違いは、違法伐採が明確なリスクとして顕在化しており、
リスクを排除するためにもデュー・ディリジェンスが求められることです。

米国では実際にロシアから違法木材を輸入したとして
床材販売大手のランバー・リクイデーター(Lumber Liquidators)社に
罰金刑が科せられました

その額、約1300万ドル(13億円以上)。株価は80%のダウンになりました。

違法木材を取り扱うリスクを避けるためにも、
欧州では、デュー・ディリジェンスが事業者の義務として定められています。

木材のリスクを捉える上での要素は、3つ。

・樹種リスク
・国リスク
・製品リスク

それらのリスクに対し、

・情報収集
・リスク評価
・リスク緩和

の3つのステップでデュー・ディリジェンスに取り組みます。

リスクの度合いは、当該地域における種の生息状況や影腐敗度数などの指標など、
国際機関やNGOによる調査報告などを参照して評価することになりますが、
ここまでやればOKという明確な基準があるわけではありません。

人権デュー・ディリジェンスも最近よく耳にするようになった言葉ですが、
これをクリアすればいい、これをやったらいい、というものではなく、
許容できるリスクであるかどうかを特定するための、リスク管理のプロセスです。

日本ではデュー・ディリジェンスが必須のものとして要求されていないこともあり、
先行して自主的に取り組んでいくことが重要です。

伊藤忠、双日、住友林業、丸紅など
日本の木材商社のデュー・ディリジェンスの実施状況については、
国際NGOのグローバル・ウィットネスが7社の取り組み状況を
以下のように評価しています。

witness
違法行為の黙認 日本の自主的制度は違法木材取引を見逃している」より

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