内部告発の時代

2016 / 7 / 5 | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

2011年に起きたオリンパスの巨額損失隠しの事件。

最近では東芝の不正会計の問題などもあり、
すでに過去のことになりつつあるかもしれませんが、
実は内部告発が日本社会に根付くきっかけになったとも
いえる大きな事件でした。

日本における内部告発の状況、
およびオリンパスの内部告発の当事者となった方の手記が
書かれているのがこちらの本です。

「内部告発の時代」

GRIガイドライン第4版では通報制度の設置状況について
細かく開示が要求されていますが、
当事者にならない限り身近ではない仕組みということもあり、
正直なところ、頭では理解しつつ実感に乏しいところがありました。

しかし、この本を読んでその重要性、
そして社内と社会全体で適切な制度を構築する必要性を再認識しました。

オリンパスの事件の概要はこうです。

内部告発をきっかけに、巨額の損失の存在を知った新英国人社長が
真相解明に乗り出そうとした矢先に解任されてしまう。

その後、欧米メディアも高い関心を持ってこの事件を報道し、
内部告発者が続いたことにより、真実が明らかに。
10年以上にわたって1000億円の粉飾が行われていたことがわかり、
最終的には旧経営陣7名の逮捕に至る。

日本企業のガバナンスに対する信頼を大きく揺るがした事件でした。

「告発」という言葉の響きが強いからでしょうか。
密告のような、利己的で悪いことをやっている、
あるいは恩を仇で返すようなイメージがあるからでしょうか。

実際には、内部告発は社会の公益と個人の尊厳
(そして長期的には会社そのもの)を守るためのものですが、
日本ではあまりいいイメージが持たれないように感じます。

英語では「whistleblowing」。

欧米社会と比べると、

・日本は集団への帰属意識が強い
・欧米は契約社会で、会社と個人の責任は明確に切り離されている
・米国では内部通報者に報いる制度がある
(社会が内部通報を積極的に活用しようとしている)

など、社会への浸透度合いや活用状況だけでなく、
その背景となる社会制度にも大きな違いがあります。

日本では、公益通報者保護制度が設置され、10年が経ちました。
・通報者の保護が不十分
・制度はあっても機能していない
・企業側の報復措置に対する罰則がない
など、様々な問題点が指摘されていることを踏まえ、
現在、実効性向上に向けた議論が進められています。

今年3月に第1次報告書が発表され、
夏にはより詳細な事項に関する報告がでる予定です。

「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会 第1次報告書」
http://www.caa.go.jp/planning/koueki/chosa-kenkyu/files/160322_siryo4.pdf

本のなかで、求められるのは信賞必罰、
責任を取るべき経営者がちゃんと責任を取り、
膿を出し切ることが組織の再生と信頼回復には不可欠、
と述べられています。

内部告発そのものよりも、むしろ、
告発があった後の会社(社会)の対応こそが
日本的と言えるのかもしれません。
戦争責任の問題からつながる、責任の所在の曖昧さ。

きれいごとだけでは済まない、難しく奥が深い問題だとは思いますが、
組織にとっても社会にとっても絶対に必要な仕組みであることは間違いなく、
よりよい制度と受け入れ活かす風土を
社会レベル、組織レベルで整えていくことが重要です。

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