Sustainability Frontline
世界の社会課題を現地からレポート!〜オランダ編「多様な働き方を受け入れる社会」
子供を乗せるための箱つき自転車「バックフィッツ」。男性が運転しているのもよく見かけます。
Photo by Richard Masoner / Cyclelicious
最近テレビなどでオランダの働き方や教育、幸福度などを目にする機会が多くなりました。
オランダ在住5年目となる筆者が身近な例をあげながら
自由な働き方がどのように推奨されているのか紹介します。
まず、移住以降、出会ったオランダ人は、
男女問わず殆どが週3日もしくは4日のパートタイマーでした。
彼らはフルタイマーと同様、賃金や保険、年金も保障されます。
オランダにはロイヤルダッチシェルやユニリーバなど世界的にも規模の大きい企業がありますが
こういった大企業の管理職でも週4日勤務、
そのうち最低一日は自宅勤務することが推奨されているところもあるようです。
またオランダ労働法では、有給休暇はもちろんのこと、
年収の8%をホリデー代として
全従業員に支給することが義務付けられています。
つまり「休む事」が非常に重要視されているのです。
更にオランダでは、様々な業務ごとの短時間労働をシェアすることにより
雇用機会を増やすと同時に、
一人当たりの労働時間を短縮する「ワークシェアリング」が進んでいます。
例えば息子の通う小学校を例に挙げると、
事務担当のスタッフ、先生方がランチ休憩を取る間に子供を面倒見てくれる外部の保育機関、
担任の先生も週4日勤務のパートタイムなので金曜日だけ教えてくれるもう一人の先生など
様々な業務を細分化することにより、先生がしっかりと子供と向き合い、
教育に専念できる体勢が整っています。
小学校の送り迎えでは、父親、母親が半々くらいの割合で来ています。
(通常学校が終わるのは15:15、水曜だけ半日なので12:30)
それだけ男性が働く企業側にも柔軟性があり、
その間に母親は仕事ができたり自分の時間が持てたりします。
当たり前の事ですが、
父親が働く企業が柔軟性のある働き方を推奨していなければ、母親は仕事ができません。
息子のクラスには主夫、つまりハウスハズバンドが二人います。
パートナーである女性がフルタイムもしくは週4日などで働く間
家事や送り迎えを担当しているようです。
パートナー間での合意はもちろんのこと、
社会全体として、こうした選択肢が受け入れられているのです。
つまり、仕事だけが全てではなく
家族を築く上でベストの状態がたまたま主夫となることだったり、
ここ数年頑張ったからしばらく休んで育児に専念したい など、
こういった考え方が受け入れられる社会なのだと感じます。
出世や年収などで測る豊かさだけでなく、家族との時間、築き上げていく関係性が重要、
というマインドセットの違い、そしてその様な選択肢があり、
それを受け入れているオランダ社会。
日本でも、社会の一員としての役割を持ちながら様々な人生を歩む個人が、
仕事と家族における両方の幸せを目指し、
多様な働き方と選択肢が受け入れられる社会になることを望む声は多いのではないでしょうか。