化石燃料からの"ダイベストメント"とは?

2015 / 10 / 8 | カテゴリー: | 執筆者:Yurie Sato 佐藤百合枝


Photo by Justin Surgent

化石燃料への投資を撤収する「ダイベストメント」の動きが欧米の大学や年金基金で広がっています。

ダイベストメントは、インベストメントの反対で、保有する資産を売却することを指します。

SRIの視点で見ると、いままでにも、
アパルトヘイトに反対し南アフリカ共和国への投資を行わない運動や
住民に被害をもたらす可能性の高いクラスター爆弾や地雷の製造企業を
投資対象から外す運動などが行われてきました。*1

国際NGO「350.org」の「化石燃料ゼロ」キャンペーンによって2012年に始まったこの動きは
まず大学生たちが反応し、2015年時点で、
オックスフォード大学、カリフォルニア大学など欧米の25校以上が
化石燃料関連企業へのダイベストメントを決定しています。

この動きは、今年に入って年金基金にも拡大しており
6月には、世界最大規模の運用資産(9000億ドル)を持つノルウェーの政府年金基金が
石炭関連の株式をすべて売却することを決めました。
(署名組織のリストはこちらから)

一方、ダイベストしてしまうと、投資家でなくなり
企業に対しての対話を行う機会を失うことになるため、
社会・環境面で問題のある企業を放置することになるという考えもあります。

たとえば、カルパース(米最大の公的年金基金であるカリフォルニア州退職年金基金)は、
すぐに投資を引き上げるのではなく、
関連企業が温暖化リスクにどう備えているのか情報開示を求めながら
エンゲージメントに取り組む方針を2014年に発表していました。*2

しかし、2015年9月に、カリフォルニア州議会で、
「石炭の利用は、人々の健康を害し、州の気候変動対策と矛盾するばかりでなく
石炭の価値は急激に下がっており、賢明な年金基金の投資対象ではなくなってきている」として
カルパースとカルスターズ(全米最大の教職員退職年金基金)に
石炭関連の株式をすべて売却するよう求める法案が可決されました。*3
(法案はこちら

この法案がジェリー・ブラウン州知事の署名により施行されれば、
2017年までに収益の半分以上を石炭関連事業から得ているすべての企業を
投資先から排除する必要があります。

カリフォルニアに続いて、
ニューヨークやマサチューセッツでも年金基金に対して同様の動きが始まっており*4
米国では州レベルでも、COP21に向けたダイベストメントへの圧力が強まりそうです。

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参照
*1: ESGキーワード ダイベストメント
http://www.dir.co.jp/research/report/esg/keyword/135_divestment.html
*2: Divestment from Fossil Fuels Is Not the Solution
https://www.calpers.ca.gov/page/newsroom/for-the-record/2014/divestment-fossil-fuels
*3: Assembly Sends Coal Divestment Measure to the Governor
http://sd24.senate.ca.gov/news/2015-09-02-assembly-sends-coal-divestment-measure-governor
*4: Coal divestment bill passes California state legislature
http://www.reuters.com/article/2015/09/02/us-california-divestiture-coal-idUSKCN0R226A20150902

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