食品廃棄物を半分に 世界に広がる削減取り組み

food waste
Photo by U.S. Department of Agriculture

「食べるものがない人もいるのに、食品のムダがこんなにあるなんて。」
多くの人が一度は感じたことがあると思います。

約8.7億人が飢餓に苦しむ中で(*1)、大量の食べ物を捨てることはもちろん倫理的に問題ですが
環境・経済側面からも食品廃棄物に関するデータを見てみると

世界では、毎年食料生産量の1/3にあたる約13億トン(*2)(約7500億ドル(約90兆円)分)
の食品が捨てられることによって
重大な経済損失を起こしているだけでなく、
ゴミの処理には、年に330億トンもの温室効果ガスが発生し
捨てられる食料を育てるために、琵琶湖(267km3)約10個分の水が毎年失われるなど
環境にも深刻な影響を及ぼしています。(環境データ*3)

そんな中、食品廃棄物を減らすための取り組みが
国や企業などさまざまなレベルで進んでおり
問題解決に向けてユニークなイノベーションも発表されています。

6月24日には、ユニリーバ 、コカコーラ、ネスレなど
70ヵ国以上の400の消費財メーカー、小売企業が参加する
ネットワークConsumer Goods Forum(CGF)(参加企業一覧はこちら)が
2025年までに参加企業の事業活動によって排出される食品廃棄物の半減(2016年比)を宣言しました。
(プレスリリースはこちら

この目標では、自社の事業における廃棄物リサイクルと排出防止だけでなく
モニタリング制度や市民への報告システム、実行のための具体的なツールキットを確立することで、
・消費者レベルでの廃棄物削減
・ポストハーベストロス(※)防止などサプライチェーンまで取り組みを拡大
・食品廃棄物の利用を最大化
を目指しています。

国単位の最近の大きな動きとしては、

2025年までに食品廃棄量の半減(2012年比)を目指すフランス政府が
5月に店舗面積が400平方メートル以上のスーパーに食品廃棄を禁止し
寄付か転用を義務付けました。
違反すると罰金だけでなく、実刑判決が科されることもある法律です。

企業や国の取り組みに加えて
世界では食品廃棄物を減らすためのクリエイティブなイノベーションも発表されています。

フィリピンでは、学生たちが、賞味期限が近くなった果物や野菜をフリーズドライ加工し
粉末化するアイデア製品を発表。


写真:Kickstar 製品紹介ページ

食品廃棄物を減らすだけでなく
粉末の食品は摂取しやすく子どもたちの栄養改善にもつながるため
将来的に人道支援団体との連携も計画中です。

イギリスでは、個人のデザイナーが「触るだけで中身の鮮度がわかる食品ラベル」を開発。

layer
additional
写真:Design By Sol, Bump Mark 紹介ページ

肉やチーズなどタンパク質が主成分の食品に使うラベルを2層構造にし
上層にタンパク質のゼラチンを入れ、そのゼラチンが腐食して液化すると
下層にある凸凹の物質が感じられるため
ゼラチンの状態から食べ物の状態がわかり、日付を印刷するよりも
正確な賞味期限を伝えられるそうです。
(中身の食べ物によってゼラチンの濃度を変えることで、腐敗の早さを調節します。)

さまざまな主体による取り組みが進む中
9月の国連総会で採択される持続可能な開発目標(SDGs)の案でも
食料危機への対応策として
2030年までに小売業・消費者のレベルで1人当たりの
食品廃棄物発生量の半減が提案されています。

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※ポストハーベストロス:農地から消費者までのバリュー・チェーンすべての過程で生まれる食品のロス
(収穫、出荷、貯蔵、加工、包装、輸送、販売を含む)
—————
データ参照
*1 農林水産省 2013: http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/pdf/0902shokurosu.pdf
*2 FAO 2013: http://www.fao.or.jp/detail/article/1144.html
*3 Consumer Goods Forum 2015: http://www.theconsumergoodsforum.com/consumer-goods-industry-commits-to-food-waste-reduction

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