Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
米NGO同性婚OKの雇用方針がわずか2日で撤回された理由
photo by Tony Fischer
少し前の話題になりますが、
ダイバーシティの問題が持つ難しさについて
非常に考えさせられたニュースがあったのでご紹介します。
発端は今年4月。
米国のNGOワールド・ビジョンが
同性婚の従業員の雇用を認める決定をしたことがきっかけでした。
What Comes After the Gay-Rights Victory?
http://www.newyorker.com/news/news-desk/what-comes-after-the-gay-rights-victory
米ワールド・ビジョンは、年間予算1千億円を超える
米国内でも十指に入る規模のNGOです。
日本をはじめ全世界に支部があり、
途上国の子どもたちを支援者がスポンサーとして支援する
「チャイルド・スポンサーシップ」を通じて
子どもたちを中心に人道支援を行っています。
今回のニュースはあくまで米ワールド・ビジョンでの話ですが、
「スタッフは同性のパートナーと結婚をしても働き続けられる」
とする雇用方針を発表したところ、
保守的で、同性婚や中絶に反対しているキリスト教福音派が一斉に反発。
複数の福音派団体が方針に反対して
支援者にボイコットを呼びかた結果、
1万人以上の支援者を失ったそうです。
同団体の創設者は米国の宣教師で、
元々キリスト教とつながりが深いのですが、
特に福音派の団体は現在大きな資金提供者となっています。
その結果、発表からわずか2日後に、
方針は撤回されることに。
一方で方針撤回は差別につながるとして、
グーグルの企業寄付担当で同団体の理事会役員を務めていた
理事は反対の意思を示すために辞任を表明しました。
おそらく、米ワールド・ビジョンはここまで
大きな反発を受けるとは思っていなかったのではないかと思います。
同性婚をしたら辞めてもらう、
というのは人権侵害であり、容認の方針自体は至極当たり前のことです。
個人的には、方針撤回は差別を容認することにつながるので
初期の方針を貫き通してほしかったですが、
子どもたちの支援を行うという団体の使命に
支障がでることも考えると、非常に難しい決断だったのではないかと思います。
同時期、インターネットブラウザーの「Firefox」で有名な
米モジラ財団の新CEOが、
同性婚反対陣営への寄付が批判にさらされ、
就任後わずか10日で辞任するということも起きています。
これも言論・思想信条の自由と関わりのある
難しい問題です。
一言で「ダイバーシティ」と括ることができない、
問題の奥深さを改めて考えさせられました。