Sustainability Frontline
増える企業の人権特集 遅れる政府の人権対応
photo by University of Essex
2013年度の企業のCSRレポートを眺めてみると、
人権に対する記述が充実してきていることが
特徴の1つに挙げられます。
たとえば三菱重工業では、
人権デューデリジェンス・ワークショップや
ステークホルダーダイアログを通じた
人権に関する課題の把握・特定のプロセスについて紹介。
・健康および安全
・労働時間
・賄賂と腐敗
・児童労働
・武装勢力への支払い
の5つを製造業において重要と考える
人権課題として特定しています。
東芝では「サプライチェーンでのCSR推進」の特集で、
サプライヤーへの取組みついて報告しています。
紛争鉱物問題では、会社としての対応方針を定め、
2012年度にはのべ約1万社に対して理解度および取組み状況の
調査を実施しました。
カシオも同様に特集で人権について取り上げ、
継続した外部有識者との対話を通じて
取組みを進めている様子を報告しています。
こうした有識者をはじめとするステークホルダーとの対話を通じて、
人権に関する外部の動向を把握し、取り組みを進める企業が
少しずつ増えてきています。
以前飲料メーカーの人事担当の方と話をする機会がありましたが、
「日本企業はこれまで人権といえば同和問題で、
組織の中に対してしか目がいっていなかった。
これからは外に広く目を向けていくことが本当に大事だと思う。」
というようなことを言われていました。
とても大事なことだと思います。
一方で、外(海外)だけでなく、
足元(国内)に目を向けることも大切です。
先月25日、民族差別や性的マイノリティ、従軍慰安婦などに
取り組む団体により、日本政府に国連の人権勧告を受け入れ、
対応することを求めるデモが行われました。
昨年末に日本が遅れて加盟した障がい者権利条約をはじめ、
国連の人権理事会や各種の人権条約は締約国の順守状況をチェックして、
評価や懸念を政府に勧告し、対応を促しています。
慰安婦を否定する公的発言。婚外子の相続差別。
朝鮮学校の無償化除外。男女の賃金格差。
いずれも勧告で対応を促されている項目ですが、
日本政府の動きは鈍く消極的です。
人権の概念が日本人にはわかりにくいと言われますが、
こうした国内の状況に目を向けていくことが、
人権に対する意識を高める第一歩になります。