企業の人権侵害訴訟 被害者を阻む壁

2013 / 11 / 30 | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

3D Judges Gavel
photo by Chris Potter

過剰なノルマにより、子どもも含め一家全員が
従事させられる強制的な労働。

十分な安全が確保されず、命の危険を伴う
炭坑や農薬を扱う作業。

農園を造成するために、違法な手段で
強制的に行われる土地収奪。

こうした人権侵害に抗議する手段の一つに、
被害者が企業を訴える人権侵害訴訟があります。

ロンドンに拠点を置くNPO
Business & Human Rights Resource Centreが
人権侵害訴訟の世界的動向についてまとめた年次報告書を発表しました。

Barriers worsen for victims seeking justice – New briefing highlights human rights lawsuits against companies over alleged abuses in over 25 countries
http://business-humanrights.org/Links/Repository/1023629/link_page_view

今年で2回目となる報告書では、
被害者が法的手段に訴えることの難しさを指摘しています。

人種やジェンダー差別による壁。
被告側の人的・経済的資源の不足。
親会社の子会社に対する責任を追及するハードル。
集団訴訟の仕組みの未整備。

また、今年4月に米国の連邦最高裁判所が下した判決の影響により、
多国籍企業の国外での人権侵害について、本国で
訴えることが難しくなってきていることが指摘されています。

米国には、外国人不法行為請求権法(Alien Tort Claims Act, ATCA)という、
米国内でモノやサービスを提供する会社であれば
米国外での人権侵害について訴えられるという法律があり、
近年多国籍企業の人権侵害について多くの訴えが起こされていました。

しかしロイヤル・ダッチ・シェルのナイジェリアでの問題について、
不起訴とする判決が出たことにより、人権侵害の被害者が
米国の裁判所にアクセスがしにくくなると懸念されています。

参考:
米国連邦最高裁判所、多国籍企業の国外での人権侵害に対する管轄権を制限
http://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2013/04/post-84.html

さらには、国や企業が個人を狙い撃ちにして起こす
SLAPP訴訟のリスクも増加しています。

国連のビジネスと人権に関する指導原則は、
国家に対し被害者が実効的な救済へのアクセスができるよう、
適切な措置をとることとしていますが、現状はまだまだ不十分です。

それでも、こうした訴訟は各地で起こされており、
同センターのサイトには、各国の約90の人権訴訟事例が
データベースにまとめられています。

人権侵害に対する企業の法的な説明責任(Corporate Legal Accountability)に関して、
制度が十分に整えられ、被害者がしっかりと救済される仕組みを作っていくことが求められています。

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