Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
セクハラの誕生を追ってみると
photo by sboneham
現在、日本の職場にはハラスメントの嵐が吹き荒れています。
パワハラ(パワーハラスメント、地位や優越性を利用して)
リバハラ(リバースハラスメント、女性上司から男性部下へ)
アカハラ(アカデミックハラスメント、教授から学生や教員へ)
マタハラ(マタニティックハラスメント、妊娠や出産にあたって職場で)
・・・
それらの原点となったが、「セクハラ」です。
セクハラという言葉が日本に上陸してから30年、
流行語大賞を受賞してから20年経ちました。
「セクハラの誕生」という本では、
セクハラという言葉が日本で使われるきっかけとなった
2つの裁判を通して、概念が社会に定着していく様子を
追ったドキュメンタリーです。
あらましはこちら。
http://honz.jp/4252
セクハラは、雇用機会均等法で2つの類型に分類されています。
1.対価型セクシュアルハラスメント
職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること2.環境型セクシュアルハラスメント
性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じることhttp://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
セクハラは元々米国で生まれた概念です。
強い人事権を持つ上司が部下の女性に関係を迫る「対価型」から、
女性の能力の発揮を妨げる職場環境を問題にする「環境型」に
発展していった経緯があり、社会がセクハラに対する
理解を深めていくことができました。
一方日本では、上司の権限や業務範囲が非常に曖昧です。
かわりに、直属の上司ではなくても、
「上司的なもの」との関係に非常に気を遣い、
断りにくいという関係性が存在します。
そこに米国の概念がそのまま導入されたため、
裁判でも被害者側が加害・被害関係の立証が難しく、
「迫られたのにどうして拒否しなかったのか」
「隙があったんじゃないか」
という反応につながりやすいという側面があります。
本書では、日本の文脈にあわせ、
「対価型」ではなく「地位利用型」という言葉の
使用を提案しています。
(こうした社会・文化の違いを理解した上での言葉の提案を
私たちも「言語のプロ」として常に意識していきたいと思います)
個人に悪影響を及ぼす
「ハラスメント」の対極にある概念が、
個人が力を発揮できる環境作りを目指す
「ダイバーシティ」ではないかと思います。
ダイバーシティは近年急に出てきた言葉のように思いますが、
ハラスメントからの大きな流れであることを踏まえると、
受け入れやすいかもしれません。