Sustainability Frontline
世界が注目 熊本市の地下水保全プロジェクト
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3月22日は「世界水の日」でした。
同日、UN-Water(国連水関連機関調整委員会)から
優れた水管理の取り組み事例を表彰する
“Water for Life(命のための水)”大賞が発表され、
水管理部門で熊本市の地下水保全プロジェクトが受賞しました。
2013年の国連“生命の水(Water for Life)”最優秀賞(水管理部門)を熊本市が受賞しました。
http://www.kumamoto-waterlife.jp/kiji/pub/detail.asp?c_id=1&id=110
熊本地域では、
阿蘇山から噴出した火砕流や溶岩が幾層にも堆積し、
大地に降った水が長い年月をかけて地層の中で濾過され、
地下水として蓄えられてきました。
地下水は、これまでの水道や農業での利用に加えて、
震災により再度活況となっている飲料水ビジネスや、
水道水に比べて安くあがるため、
コスト削減目的に工場などで大量に利用されています。
熊本市では、周辺地域の地下水位が、
使用量が75%減ったにも関わらず、
20年前と比べて約5メートル下がったそうです。
日本では、実は地下水に関する法律がなく、
地下水は土地所有者が自由に使える状態となってしまっています。
同市では、独自に条例を制定。
年間3万立方メートルを超える地下水利用者に対し、
許可制にするとともに、節水と涵養対策を義務付けています。
地下水の涵養活動、と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、
その手法として注目されているのが、水田。
通常の植え付け時だけでなく、冬水たんぼとして
冬にも水を張ったままにしておいたり、
転作田湛水として小麦などの刈入れ後の期間に水を張るなどして、
ゆっくりと水を地下にしみ込ませていきます。
(涵養する水田や森が減ったり荒れてしまったことも地下水減少の原因です)
実施にあたっては、協力農家を募り、
水を張った農家に対して助成金を付与します。
地下水の使用者はその費用を負担します。
同地域に工場があるソニーやサントリーなど、
大手企業が独自に展開をする場合もあれば、
中小企業などはくまもと地下水財団を通じて行うケースもあります。
同財団のプログラムには、お米を食べることで
地下水涵養に協力する「ウォーターオフセット事業」も展開しています。
地下水については、早急に国として、
「公水」と定め、保全ルールを整備することが求められています。
日本の地下水をめぐる現状については、橋本淳司さんの
「日本の地下水が危ない」が詳しく、
お勧めです。