Sustainability Frontline
アジア各地で続く最低賃金上昇・世界的には労働者への分配は減少傾向
タイでは今年1月から最低賃金が大幅に引き上げられ、
低賃金労働力に依存する産業界から反発があがる一方、
政府は貧富の格差是正が長期的な経済安定につながるとして、
議論が巻き起こっています。
http://mainichi.jp/select/news/20130112k0000e030191000c.html (2021年11月1日時点で無効)
その他にもベトナムやインドネシアなど、
各地で最低賃金引き上げの動きが続いています。
先月、国際労働機関(ILO)より発行された
「世界賃金報告2012/13年版」を見ると、
マクロなトレンドとしてどうなっているかがよくわかります。
Global Wage Report 2012-13
http://www.ilo.org/global/research/global-reports/global-wage-report/2012/lang–en/index.htm
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/2012.htm#99
●世界的に賃金は上昇しているものの、、
上昇率は経済危機以前の水準を下回っており、
月額でみた世界全体の実質平均賃金は
2007年に3%、2010年には2.1%、2011年には1.2%と鈍化傾向。
●過去10年間でほぼ3倍の賃金上昇を記録した中国を除くと、
この数値はさらに低くなる。
●一方で、労働生産性の上昇に比べると
賃金上昇の割合は低くなっている。
資本所有者への分配が増加し、
労働者への分け前がますます減少している傾向がみられる。
●先進国における、
1999年以降の労働生産性の伸びは賃金上昇の2倍。
米国では1980年頃と比べて、
農業以外の部門の時間当たり労働生産性は
約85%上昇していますが、
労働者の収入は35%程しか増えていない。
●多くの国で、国民所得に占める勤労所得の割合が低下。
これは需要の抑制や一般世帯の債務増加をもたらし、
経済の低下や公衆の不満が強まり、社会不安のリスクを高める。
報告書では、
輸出市場における競争力増強を目指した労働コストの圧縮は
各国レベルでは魅力的かもしれないが、
地球規模では持続不能であろうとし、
労働者の分け前の「底辺に向けた競争」を促進しないよう指摘しています。
働く貧困層(ワーキング・プア)に社会的保護を
提供する手段としての最低賃金。
ギリシャでは財政救済の条件として
最低賃金が22%引き下げられましたが、
ブラジルでは経済が悪化したときでさえも、
水準を高め続けています。
今後も各地で最低賃金引き上げの動きが続いていくことは
間違いありません。