報酬ポリシーにみる 中長期・非財務の価値創造と報酬体系

2012 / 8 / 3 | カテゴリー: | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

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photo by Bogdan Suditu

海外の企業では、株主向けに発行しているアニュアルレポートとは別に、
経営陣の報酬の詳細について開示する
「報酬レポート(Remunaration Report)」を
発行する企業が出てきています。

その中では、いくらの報酬が支払われたかというだけでなく、
報酬決定の基準が「報酬ポリシー(Remuneration Policy)」として
示されています。

今年5月に欧州のタイヤメーカー ピレリ(Pirelli&C.S.p.A)が、
2012年~2014年の3カ年の中期計画の発表にあわせて、
株主会議に諮った報酬ポリシーについて見てみます。

Reports of the Board of Directors and proposals of resolution
Remuneration Policy: consultation
http://www.pirelli.com/mediaObject/corporate/documents/en/investors/assemblea_10_05_2012/Remuneration_Policy/original/Remuneration_Policy.pdf

EUにおける一連の統合報告・非財務情報開示の流れを背景に、
同社の新しい報酬ポリシーの中では、
非財務側面のパフォーマンスも報酬決定の要素として取り入れられています。

経営陣の報酬体系は以下の3つに分かれています。
1.固定報酬
2.目標管理制度(MBO)を活用した年間変動報酬
3.中長期の変動枠報酬(LTI)

※LTI (Long Term Incentive)・・・
中長期的な業績・企業価値向上への貢献に対して支払われるもの。

1はいわゆる固定給。

2は年初に計画された目標の達成状況に応じて、
あらかじめ決められた固定給に対する一定比率が
ボーナスとして支払われます。

このうち、最初2年間の年間変動報酬の50%については、
3の内の共同投資(“coinvestment” LTI Bonus)として積み立てられます。

3はグループ全体の3年間の中期計画の達成状況に応じて、
固定給に対する一定比率がボーナスとして支払われます。

これはさらに2つに分かれています。

a)一般的な中長期インセンティブ
3年間の目標の達成状況に応じて支給。

b)共同投資型中長期インセンティブ
積み立てられた2の総額の内、
50%は目標の達成状況に関係なく、
中期計画の終了年度に自動的に支払われます。

残りの50%については、3年間の目標状況に応じて支払われます。
ただし金額はさらに2つの基準を考慮して
最大50~125%増額されます。

-2/3は3年間の売り上げ成果に対する平均収益の改善
-1/3はサステナビリティ指標

サステナビリティ指標は、
DJSIの自動車部品/タイヤ部門と
FTSE4Goodのタイヤ部門での評価を元に算出されます。

非財務面のパフォーマンスと報酬との連動は
今後ますます重要になってくるテーマです。

対象をどうするか、何を評価の基準とするか、
設計をどうするかなど、各社で様々な仕組み作りが進められています。

また日本でも、報酬決定プロセスの透明化が進んでいることが
こちらの調査よりわかります。
「役員報酬サーベイ2011」
http://www.pwc.com/jp/ja/advisory/press-room/news-release/2011/executivecompensation2011.jhtml

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