Sustainability Frontline
B Corp Assessmentから読み解く 持続可能な企業の要件
photo by Alan Cleaver
Shared Interestプロジェクトvol.1の続編として、
先日「B Corp Assessmentを読む会」を実施しました。
米国では、経済的利益と社会的利益を同時に追求する組織を認証する
「B Corporation認証」という仕組みがあります。
B LabsというNPOが運営し、近年一部の企業の間で
取得する動きが広まっています。
認証に当たっては、最初のステップとして、
B Corp Assessmentというアセスメントを受けるのですが、
(オンラインで誰でも受けることができるようになっています)
その評価項目が独特で、とても参考になります
全部で50ページにも及びますので、
ここではいくつか特徴的な項目を紹介したいと思います。
(DM Manufacturing 250+ Impact Assessmentより)
●ガバナンス
「ミッションに社会的な価値を生み出すことが明記されているか。」
「それらのミッションを社員に浸透させるための教育が行われているか。」
「ステークホルダーから取締役会に代表が参加しているか」
ガバナンスの項目では、ミッションに関連する設問から、
社外取締役や監査など体制や透明性に関する設問が並びます。
「役員に対して利益相反をしていないか調査を行っているか」
という、ちょっと踏み込んだ設問も出てきます。
●従業員
「フルタイム社員の報酬について、最低受給者と最高受給者の間で何倍の差があるか」
「一番受給額が低い社員の時給は生活賃金(一定の生活水準を維持するために最低限必要な時間給)を何%上回っているか」
「前年比で賃金はどれだけ増加したか」
フルタイム社員やパートタイム社員、派遣社員、契約社員など、
契約形態を踏まえた賃金体系の実態が問われています。
公平な利益配分を促す意図が伺えます。
「パートタイム社員に対しては、週の勤務時間が何時間以上から健康保険が提供されているか」
「男性社員の育児休暇取得は行われているか」
米国は皆保険制度ではないため、
企業が従業員に対して提供している健康保険の内容に
対する注目が自然と高くなります。
(たとえば歯科治療を保険の対象としているかなども設問として入っています)
その他に、社員の内部昇格を推奨する質問や、
従業員による自社株取得を通じたオーナーシップに
関する質問が続きます。
日本にも社員による持株会がありますが、
安定株主の確保というよりも、利益の公平配分の意味合いが強いように感じます。
また柔軟な働き方を推奨する設問も用意されており、
「在宅勤務をしている管理職がいるか」
といった設問も出てきます。
●コミュニティ
「サプライヤーの社会面・環境面の取り組みに対する評価の実施状況、方法と頻度」
サプライヤーに対しては、チェックだけでなく、
教育・改善の仕組みがあるかどうかも問われています。
「原材料をどの程度地域から調達しているか」
「地域内での売り上げが全体の収益に占める割合」
ここでの地域とは200マイル(332km)を指します。
日本でいうと、東京~名古屋間が大体300km。
国の大きさが違うので、「地域」の概念も
日本より広く捉えている印象です。
「雇用やサプライヤーにおいて多様性を確保しているか」
多様性の対象としては、女性や民族マイノリティ、
低所得地域の居住者などを含みます。
自社で雇用するだけでなく、調達や製品を通じて
多様性に貢献することが求められています。
以上、ほんの一部を見てきましたが、
「経済的利益と社会的利益を同時に追求する組織」に対して、
かなり多様な側面が求められていることが感じていただけたかと思います。
一部社会背景の違いなどにより設問の意図がわかりにくいものもあるのですが、
是非一度オンラインでアセスメントを受けてみることをお勧めします。