Interview:サステナビリティの最新動向を学び、翻訳に活かす

2020 / 10 / 1 | 執筆者:EcoNetworks Editor

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エコネットワークスが開講する「サステナビリティ翻訳トレーニング」は、主にサステナビリティ分野の翻訳者を目指す方のための講座です。言語事業で積み重ねたノウハウを惜しみなくお伝えすると同時に、サステナビリティ分野の最新動向を盛り込んでいます。講座の内容、そして環境・サステナビリティ翻訳の今について、企画・運営する二口 芳彗子さんに話を聞きました。

※「サステナビリティ翻訳トレーニング2020-2021」は、定員に達しました(10月13日までキャンセル待ち受付)。講座の詳細はこちら


話:二口 芳彗子
翻訳者。エコネットワークス取締役/Language Service Officer。「サステナビリティ翻訳トレーニング2020-2021」を企画・運営。ジャパン・フォー・サステナビリティの英訳ボランティアをきっかけに、環境・サステナビリティ翻訳の道へ。詳しくは、こちら

取材・文:近藤 圭子
企業やNPOの広報物制作をお手伝いするライター。


課題には最新動向を反映。今回はサーキュラーエコノミーやエシカル消費も

—今年で4年目を迎える「サステナビリティ翻訳トレーニング」は、早々に定員に達したそうですね。

そうなんです。多くのご関心を頂戴し、うれしく思っています。「サステナビリティ翻訳トレーニング」では、受講生の皆さんに全6回の課題に取り組んでいただき、1回ごとに講師から添削と全体の講評をお返しします。講評では、訳例や間違いやすいポイントの解説に加えて、現役翻訳者である講師がミスを防ぐために実践している工夫、リサーチで活用したい信頼できるリソースの紹介などもあり、修了後の実務に活かせる内容です。

—どのような課題が出るのですか?

気候変動やエネルギー、海洋プラスチック、SDGsなど、環境・サステナビリティ翻訳において押さえておくべきテーマの文章です。国際機関やNGOが公開している報告書などから、約800ワードを抜き出して、課題にしています。今年で4年目となる講座ですが、最新の動向を踏まえて毎年、課題の一部を見直しています。今回は、エシカル消費とサーキュラーエコノミー、人権を課題に加えました。どれも外せないテーマです。

—「最新の動向」とは、どこで得ているのでしょう?

エコネットワークスの言語事業で、NGOや企業からご依頼いただくお仕事からです。世の中の最新の動きは、翻訳する文書によく現れています。また、私たちは、調査・分析事業も行っていますので、リサーチャーが日々触れている情報からも反映しています。翻訳において、依頼された文書の背景知識は、とても大切です。もちろん、翻訳スキルも必要なのですが、背景知識の強化は、その一歩手前に求められるのではないでしょうか。

環境・サステナビリティ翻訳への期待は、時代とともに変化

―二口さんは、環境・サステナビリティ翻訳に長く携わってきましたよね。初めて、環境翻訳に触れたのはいつ頃ですか?

ジャパン・フォー・サステナビリティ(※1)の英訳ボランティアが最初ですから、2004年頃です。今、環境問題の緊急性や危機感は、当時とは比べ物にならないくらい高くなっていると感じます。例えば、企業のトップをNGOや市民団体が訪問し、環境負荷の削減を提言するとき、資料の翻訳をお任せいただくことがあります。その内容が本当に危機感に満ちていて。翻訳においても、断固たる言葉を選ぶことが求められます。

NGOや市民団体からご依頼いただくお仕事からは、サステナビリティへの関心の裾野を広げようとする思いも感じています。というのは、ご提出した訳文に対するフィードバックに、一人ひとりにより伝わるようにしたいという姿勢が見えるのです。サステナビリティにあまり関心のない方でもスーッと読めて響く内容にしたい、と。

—状況の変化は、翻訳にも影響しているのですね。変化は企業側にもあるのでしょうか?

そうですね、例えば、環境面だけを報告する環境報告書のみ発行していたのが、次第に、労働や人権など社会面を加えてCSR報告書やサステナビリティレポートに移行する企業が主流になりました。GRIガイドライン(※2)やISO26000(※3)の発行は大きな変化だったと実感しています。

それから、英語を使える方が企業の中に増えたと思います。あらゆる翻訳発行物を、英語ネイティブの方がチェックしていることも、少なくありません。ただ、これはやむを得ないのですが、必ずしもサステナビリティ専門の方ではないのです。

サステナビリティ分野には専門的な表現があります。GRIやISO26000、あるいはESG評価で使われる用語、そして多様性に配慮した用語選択も重要で、これらを考慮しながら、伝わる文章に練り上げていきます。クライアント社内でチェックしてくださる方も、翻訳を仕上げるという同じ目的を共有する「チーム」の一員ですから、その目的に向かって意見を交換することが大事です。環境・サステナビリティ専門の翻訳者が企業コミュニケーションに関わる必要性は、これからもなくなりません。

翻訳者の実務レベルで言えば、サステナビリティの文脈で押さえるべきポイントを知っていると、クライアントとのコミュニケーションが円滑になります。「なぜこの用語を選択したのか」を説明できるようになりますから。また、講座の受講は、翻訳者だけでなく、社内でチェックを担当する立場の方も歓迎です。

サステナビリティの文脈でどう使われる? じっくりと言葉の研究を

—サステナビリティ分野の表現や、多様性に配慮した用語選択を、翻訳者の皆さんはどのようにして身につけていっているのでしょうか?

クライアントからご依頼いただく翻訳を担当するなかで、実践を積みながら研究して、培っています。もちろん、辞書で調べれば、ある単語に対応する訳は出てきます。ですが、サステナビリティの実際の文脈の中では、どのように使われているのか。じっくり研究して、言葉に対する理解を深めてから訳出しています。

エコネットワークスには、NGOや企業、行政など、さまざまな立場の方が翻訳をご依頼くださいます。サステナビリティを多面的に見られるのも、表現に対する感覚を培うのにプラスになっているのかもしれません。

—「サステナビリティ翻訳トレーニング」は、まもなく開講となります。あらためて、どんな思いですか?

そもそもエコネットワークスは当初、ジャパン・フォー・サステナビリティというNGOを財務面から支えるために設立された会社でした。環境・サステナビリティ翻訳は、私たちの原点です。これまで培ってきた経験を、今回のような講座として還元して、サステナビリティに強い翻訳者が増えたらうれしく思います。そして、よりサステナブルな社会の実現につながったらと思っています。

※1 2002年から2018年まで、サステナビリティに関する日本の情報を日英で発信したNGO。https://www.japanfs.org/ja/
※2 Global Reporting Initiativeが発行するサステナビリティ報告書のガイドライン
※3 組織の社会的責任に関する国際規格

Photo by Luisella Planeta Leoni via Pixabay

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