時間・休日に関する日本の法律の基礎知識

2020 / 8 / 24 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

エコネットワークスでは、「働く時間も休む時間も自分で決める」ことを基本にしています。

雇用パートナーには、清算期間が3か月のフレックスタイム制(*1) も導入しているため、
始業・終業時間をはじめ、今日は何時間働くか、今月全体ではあと何時間働くか、
という調整も個人の裁量で行っています。

自分の働く時間を決める時に重要なのは、時間をマネジメントする力。
そして、社会一般ではどういうルールがあるのかを知り、自分にもあてはめて考えて
みること。どのような法律・制度があるのかを知ることは、自分自身のサステナブル
な働き方を考えるベースにもなります。

自分を守ることはもちろんのこと、ともに働く相手を守り、尊重するためにも、
知っておきたい日本の法律の基礎知識をまとめました。

(以下、法律用語を解説しているため、情報量が多くなっています。気になる項目
について、辞書的に、あるいは詳細情報へのリンク集としてもご活用ください。)

*1 フレックスタイム制とは、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めるこ
とによって、生活と業務との調和を図りながら効率的に働くことができる制度のこと。
2019年4月から労働時間の調整を行うことのできる期間(=清算期間)を3か月まで
延長することが可能になり、より柔軟な働き方の選択ができるようになりました。


執筆:星野美佳
社会保険労務士。
社会課題解決に取り組む人のための社労士事務所「サステナ」を開設し、
主にNPO等ソーシャルセクターの人事労務課題の解決に向けて奮闘中。


労働時間や休日に関する定め

まず知っておきたいのは、労働時間や休日に関する法律の定め。
特に「時間外労働」については、2019年4月から上限規制が設けられ、
今後さらに規制が厳しくなることも想定されます。

業務委託契約で働くフリーランスには原則として労働基準法などは適用されません(*2)が、
自分の労働時間を通算すると何時間で、そのうち時間外労働にあたる部分は何時間あるのか、
きちんと計ることで自分の生産性をチェックする指標にもなります。

さらに、「法定労働時間」と「所定労働時間」の違い、「代休」と「振替休日」の違い
なども、おさえておきたいですね。

*2 業務委託契約の関係にある場合に労働基準法や労働契約法などが適用されるか
否かは、実質的な「使用従属性」の有無によって判断されます。
詳しくはこちら(「業務委託契約の法的位置づけと問題になりやすいこと」)もご参照ください。

【労働時間や休日に関する労働基準法上の定め】

●法定労働時間:原則1週40時間、1日8時間(休憩時間を除く)。

●所定労働時間:法定労働時間の範囲内で、各組織が自由に定めることができる労働時間。
就業規則や、個別の雇用契約書等で定める。

●時間外労働:法定労働時間を超える労働のこと。時間外労働を行わせる場合は36協定の
提出と割増賃金の支払いが必要。
※36協定について詳細はこちら 36協定とは(厚生労働省)
※ 割増賃金について詳しくはこちら 「しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編」(PDF)(東京労働局)

○時間外労働の上限規制:原則として月45時間・年360時間。
臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできない。
(2019年4月から[中小企業は2020年4月から]施行)
※詳細はこちら 「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(PDF)

●深夜労働:深夜22時~早朝5時に働くこと。この時間帯に働かせる場合には通常賃金の
25%以上の割増賃金が必要。

●法定休日:労働基準法で定められた最低限与えなければならない休日のこと。
週に1回、または 4週間を通じて4回。

●法定外休日:法定休日以外の休日。「所定休日」と同義。
(一般に、土日祝を休みと定め、日曜日を法定休日としている場合は土祝は法定外休日となる)

●休日労働:法定休日に労働をすること。法定休日に働かせる場合には通常賃金の35%
以上の割増賃金が必要。

●代休(代替休日):休日に労働した場合に、その代わりとして後日休みを与えること。
代休を取得したとしても、休日労働分の割増賃金の支払いが必要。

●振替休日:事前の手続きによって休日と労働日を入れ替えること。
振替によって、元々の休日に働いたとしても休日労働にはならず割増賃金は発生しない。

年次有給休暇の取得の義務化

そして、「働き方改革関連法」の一部として2019年4月から施行されたのが、
年次有給休暇の年5日の確実な取得について。

有給休暇の消化率が49.4%(「平成29年就労条件総合調査」(厚生労働省))と、諸外国と
比べて著しく低い日本では、年次有給休暇を10日以上付与されている労働者に対して、
年5日は必ず有給休暇を取得させること、そのために企業が時季を指定すること、が法律で
義務化されました。

【年次有給休暇に関する定め】

●年次有給休暇:一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を
保障するために付与される有給の休暇のこと。
(1)雇い入れの日から6か月経過していること、
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤したこと、
の2つの要件を満たした労働者に、10労働日の年次有給休暇が付与される。
その後は勤続期間に応じて付与日数が20労働日まで増えるしくみ。
パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者については、年次有給休暇の日数は
所定労働日数に応じて比例付与される。
詳細はこちら:年次有給休暇とはどのような制度ですか。(厚生労働省 FAQ)

●時間単位年休:年次有給休暇は、1日単位で与えることが原則だが、労使協定を結べば、
1時間単位で与えることができる(上限は1年で5日分まで)。
(時間単位年休を活用することで、1日の労働時間の中で一部のみ年休を使用する、
という柔軟な使い方ができるようになる)

●年5日の年次有給休暇の確実な取得:2019年4月から、全ての企業において、年10日以上
の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数
のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられた。
なお、既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、
使用者による時季指定をする必要はない。
詳細はこちら:「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(PDF)

フレックスタイム制、裁量労働制等、働き方に関する制度

さらに、働き方に関する下記の制度についても知っておくと、「多様な働き方」の選択肢が広
がります。

裁量労働制については、労働時間と成果・業績が必ずしも連動しない職種において適用されて
いるものの、不当な長時間労働や残業代未払い等の問題もあり、日本での導入にはまだ多くの
ハードルがある、のが実態。
それでも労働時間管理を個人の裁量に任せる新たな働き方については、近年ニーズが高まって
います。

働く個人も、組織も、労働時間や制度に対する正しい知識を持って運用し、無理のない持続可
能な働き方・暮らし方を実践していきたいですね。

【フレックスタイム制、裁量労働制等、働き方に関する制度】

●フレックスタイム制:一定期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で始業及び
終業の時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度。
※詳細はこちら:「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」

●変形労働時間制:労働時間を月単位や年単位で調整することで清算する制度。
特定の時期に業務の繁閑に差がある場合に、一定の単位期間について、週あたりの平均労働
時間が週法定労働時間の枠内に収まっていれば、1週または1日の法定労働時間の規制を解除
することを認める制度。1ヶ月単位、1年単位、1週間単位のものがある。
※詳細はこちら

●みなし労働時間制・裁量労働制
みなし労働時間制および裁量労働制には以下の3つの制度がある。

〇業場外みなし労働時間制:事業場外で労働する場合で労働時間の算定が困難な場合に、原則
として所定労働時間労働したものとみなす制度

〇専門業務型裁量労働制:デザイナーやシステムエンジニアなど、業務遂行の手段や時間配分
などに関して使用者が具体的な指示をしない19の業務について、実際の労働時間数とはかか
わりなく、労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度
※対象となる19の業務はこちら

〇企画業務型裁量労働制:事業運営の企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務遂行の
手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない業務について、実際の労働時間数
とはかかわりなく、労使委員会で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度
※詳細はこちら

以上、法律的な用語には難解なものも多く、一度読んだだけでは理解できないものもあるかもしれません。自分自身の働き方に照らして興味関心のある制度から読んでいき、気になった時に改めて振り返って調べてみる。そうやって少しずつ理解を広げ、自身の働き方の検討に役立てていただければと思います。

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