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個人・組織・社会が輝くために サステナブルな休みをどう後押し?(最終回)
2022年3月からスタートした「サステナブルに休む」シリーズも、いよいよ最終回です! サステナブルな働き方・休み方を実現するべく、これまで約1年間にわたりパートナーと対話するシェア会・座談会を行い、延べ40人のパートナーが参加しました。
【「サステナブルに休む」シェア会・座談会 全6回】
- 第1回 キックオフ: 「サステナブルに休む」どう実現? ENWとパートナーの新しい試み
- 第2回 子育て期(産前産後・育休): 育休で人生を豊かに、強い組織へ
- 第3回 子育て期(幼児期・就学期): 子どもと一緒に歩む「子育て期」 サステナブルに休むヒントは?
- 第4回 介護・看護期: すべての世代に起こりえる「介護」 どう休めたらサステナブル?
- 第5回 働き盛り期: 働き盛りの休み方、カギは「一日休養 一日教養」
- 第6回 まとめ: 本記事
各回では、さまざまなライフステージにおいて「どうしたらサステナブルに休めるか」を考える中で、「個人」と「組織」の両方にとっての休むことの価値や、休むにあたっての課題やヒントが浮かび上がってきました。そこで最終回では、今後「個人」と「組織」がアクションにつなげていけるように、両者の視点から「サステナブルに休むことの意義、課題、休みやすくするためのアイデア」について考えました。
執筆:宮原 桃子
東京・世田谷区に暮らすライター。ENWでは、企業向けのサステナビリティ関連コンテンツ制作に取り組む。かつて暮らしたドイツにて、プライベートや家族の時間、長期休暇などを優先する社会を経験し、サステナブルに休むことを大事に考えている。
休むことで個人も組織も輝き、社会も変わる
最終回のシェア会にはパートナー6人がオンラインで集い、これまでの回で出されたさまざまな意見を整理した図を囲みながら、ざっくばらんに話し合いました。議論は「サステナブルに休むことが個人や組織にもたらす価値・意義とは?」からスタート。参加者から「そもそも “休む”とはどういうことか」という問いかけが改めてなされました。以前行った休み方に関するアンケートでも(詳しくはこちら)、これまでのシェア会での意見でも(下記図)、その答えは休息に留まらず「リフレッシュ」「自己研鑽」「やるべきことから切り離される」「家族のため」など多種多様でした。とはいえ、どのような休み方であっても、「休むことによって、一人ひとりが力を発揮し輝くことができる」という点で、個人にも組織にも価値があることは明らか、という話に至りました。
キャプション:全6回を通じて浮かび上がった要素を、図で可視化しました。
一方、組織の視点では、しっかり心身を休めて仕事に臨んでもらうことも、休みの大きな意義です。休み方は個々人に委ねられているものの、組織として休息の重要性を発信するとともに、個人と組織の間で「サステナブルな休み方とは」「休んだ後にどういう状態であるべきか」といった共通認識を持つことも大切だという話になりました。誰もが休める組織にすることは、誰かが休んでも持続的に回るレジリエンスの高い組織づくりにつながります。
さらに、個人と組織に留まらず、社会という視点にも話が及びました。個人の休み方は、社会のあり方にもつながっています。例えば、休みを消費活動にばかり費やすことは大量消費社会を形づくります。逆に、個人の休みの過ごし方によっては、サステナブルな社会をつくっていくこともできます。そんな視点でも休む価値を捉えていけるといいのでは、との声も上がりました。
課題の一つは、フリーランスが休める仕組み
ただ、休む意義や価値はわかっていても、実際に休めているのでしょうか? 課題の一つに浮かび上がったのは、エコネットワークス(以下ENW)のパートナーにも多く、昨今急増しているフリーランス・自営の人たちの状況です。有給制度がある会社員とは異なり、休む=収入減につながるため休みにくいという現状があります。フリーランスが休む際の金銭的補償を提供する企業も出始めているそうですが、財政的な難しさも大きいため、政府をはじめ社会全体でフリーランスを保護する法制度・休める仕組みを整えていくべきという意見に、うなずく一同でした。
また、組織においては、リフレッシュ休暇のように休みを後押しする制度が整っているか、在宅勤務によって逆に仕事をし続けてしまうといった課題への対策ができているか、といった論点も挙げられました。その他、家族や仕事仲間、クライアントとの間で「休むこと」への理解・期待が異なるという、参加者の多くが経験している課題についても議論に。お互いの時間の使い方に対するリスペクトを社会全体で広めていくことが大切、という原点に立ち返りました。
カギは、休みを前向きにとらえる組織文化と、背中を押す仕組み
こうした課題がある中で、どうすればサステナブルに休んでいけるのでしょう。個人として、自分に合う休み方を見つける、仕事の仕方を工夫する、クライアントを含めた周囲と意識を共有するといったことも大切です。しかし、個人のアプローチだけでは限界があり、やはり議論は「組織がどう後押しできるか」が焦点に。
まず一番の土台になりそうなことは、休むことは「個人と組織に前向きな価値を創り出す」という認識や組織文化をしっかりと浸透させていくことです。その上で、一人ひとりがそれぞれのペースで柔軟に休める仕組みが欠かせません。また、介護や子育てなどの経験や課題をオープンに共有する場づくりをすることも、組織内での理解を広め、誰もが当事者である=休むのが当たり前、という認識につながっていくでしょう。
さらに、フリーランスの休みをどう後押しするかについても、議論が盛り上がりました。金銭的な補償が提供できればベストである一方、複数の取引先と仕事をするフリーランスにとって、どこか一社の有給制度を使うことはしっくりこないとの意見もありました。例えばENWでは、パートナーが能力開発を行う際に助成する「能力開発ファンド」や、個人のサステナブルな取り組みに金銭的な支援を行う「サステナビリティファンド」などの制度を作って、働く以外の時間の使い方に助成をしています。このように、有給という従来の概念から離れ、仕事以外の目的や状況に応じた金銭的補償を提供するというアプローチも、休みの時間をサポートする一つの方法になりえるのでは……といった話になりました。
最終回のシェア会を終え、参加者からは「この企画が、サステナブルに休むことについて積極的に話す場となり、組織文化の醸成につながっている」「休むに際する苦労や工夫、ヒントなどが共有できた」「対話を踏まえて、ENWで新たな仕組みや制度づくりを実践していってほしい」といった声が出ました。
まさにENWでは、この企画から浮かび上がったさまざまなアイデアや意見も踏まえて、今ワークルールや制度の見直しを進めようとしています。個が輝くサステナブルな働き方・休み方の実現に向けて、ENWでも個人と組織が手と手を取り合いながら実践を進めていきたいと思います。