食をめぐる冒険~サステナブルフードを試す~

2021 / 5 / 29 | カテゴリー: | 執筆者:mihosoga

サステナブルフードへの関心が高まっています。今回は、高まりの背景、私の実践と気づきをお伝えします。


執筆:曽我 美穂
富山県在住のエコライター、エディター。


野菜のサラダ

高まる、サステナブルフードの重要性

サステナブルフードは、生産から消費までのプロセスにおいて環境・社会のサステナビリティ(持続可能性)に配慮された食です。近年、注目が高まっており、EU国際環境保護団体WWFも、サステナブルフードの重要性を訴えています。

サステナブルフードは、SDGs目標12「つくる責任つかう責任」や目標13「気候変動に具体的な対策を」や目標14「海の豊かさ」、目標15「陸の豊かさ」にも関わる重要なテーマです。また、食べることは避けて通れない行為なので、人類みんなが関わる、身近な問題でもあります。

私は、今年1月~5月に、エコネットワークスのプロジェクトの一環で、企業のサステナブルフードのガイドブックを制作しました。冊子では食に関する問題提起と共に、私たちができることを、基本編と応用編に分けて伝えたのですが 「せっかくなので、発信しているアイデアを試したい」と思い、できることに挑戦してみました。今回は、特に印象に残った3つの方法についてお伝えします。

その1:日々の食事に「代替肉」を取り入れる

肉の生産には、家畜の飼育が伴いますが、牧場を開くための森林破壊、飼料や水の大量消費、家畜の排せつ物の影響、牛のゲップによる温室効果ガスの排出など、様々な環境への影響が懸念されています。また、動物福祉の視点からも、劣悪な飼育環境が批判されています。しかし肉の消費量は増えており、FAOSTAT ウェブサイト (2020)によると、世界の肉の消費量は過去50年間で4倍以上になりました。

そこで、牛肉、豚肉、鶏肉や魚の代わりに、豆などを原料にした「代替肉」の開発が、世界中で急速に進められています。北米ではスタートアップ企業数社が、見た目も味も肉そのものの代替肉を開発。スーパーで買ったり、大手ハンバーガーショップで味わったりできるほど身近になっています。

残念ながら、日本では、北米で話題のメーカーの代替肉はまだ販売されていません。ただ、ここ最近、ウェブ通販や地元のスーパーでも代替肉を見かけるようになったので、見つけるたびに購入しています。

最初に試したのは、フィンランドのメーカーが作っている、そら豆をベースにした代替肉。食感、味は豆なので、家族に内緒でラザニアに入れてみたら「これは肉じゃないね!」と娘(11歳)に言い当てられました(笑)。ただ、食べごたえは十分あり「肉の代わりに使うのもいいかもしれない」と感じました。目下の課題は、肉の風味が好きな家族でも納得するようなレシピを見つけることです。

大塚製薬が出している「ゼロミート」シリーズのハムは、味と食感を限りなく肉に近いものに再現しており、言わなければ気づかれないほどの完成度の高さでした。コストコに行った際は、植物性原料のパティが入った「プラントバーガー」にトライ。夕飯として食べたのですが、口に入れるのが大変なほど大きく、 次の日の朝まで満腹感が続きました。肉の風味はあまりなかったですが、ソースとの相性が抜群で美味しかったです!

コストコのプラントバーガー

コストコのプラントバーガー

代替肉は、北米やヨーロッパではかなり身近な存在になっており、カナダ在住の友人は「急いで買ったら、間違って代替肉のソーセージを買ってしまった!」と話していました。代替肉が、世界中で日常的な食材になる日も近そうです。

その2:パートタイムベジタリアンになる

みんなが肉を食べる回数を少し減らすだけでも、環境問題の解決に大きく貢献できる、という考えから、週に数回、1日の数食分など自分で頻度を決めて肉や魚を食べないベジタリアン食を実践しよう、という「パートタイムベジタリアン」の考え方が、欧米を中心に広がっています。ミュージシャンのポール・マッカートニーさんは、娘のステラ・マッカートニーさんらと共に、毎週月曜は肉食をお休みしよう、と呼びかける「MEAT FREE MONDAY」を提唱。日本にも支部ができ、少しずつ広まっています。また、英語では菜食を中心としながら肉食も排除しない食生活を送る「フレキシタリアン」という言葉もあります。

私も朝食と昼食の際、パートタイムベジタリアンを実践しています。家族は肉も好きなので、夕飯にはお肉や魚を取り入れています。「全てベジタリアンにしなければ!」というプレッシャーがないので、無理なく続けられますし、いつも以上に野菜を摂るようになったので身体も肌も快調です。

ビリヤニ

最近のお気に入りベジタリアン料理は「なんちゃってビリヤニ」。ご飯と野菜を炒めて、カレー用スパイスで味付けをし、タンパク源としてクリームチーズを入れています。

その3:食品ロス対策につながる製品を買う

国連環境計画(UNEP)の報告書「Food Waste Index Report 2021」によると、世界の食品ロスの量は年間9億トン以上。日本でも、農林水産省の報告によると年間600万トンの食品ロスが発生しており、日本人の1人当たりの食品ロス量は1年で約47kgにもなります。

こうした状況の解決策として、ウェブ通販やアプリケーションを通じて、賞味期限切れが近い食品などを売る企業や団体が世界中で増えています。日本でも、食品ロス削減のために賞味期限切れが近い商品を安く販売している通販サイトや、賞味期限切れが近い食品を集めて食べ物に困っている人々や施設に配るフードバンク活動が広まっています。

私は、2021年の年始にロスゼロというウェブ通販の「食品ロス福袋」を購入(現在は売り切れ)。結婚式の引き出物に使われなかった食品や、植物性の素材でできたマヨネーズ、ちょっと変わった調味料などがぎっしり入っており、子どもたちも大満足でした。

また、rebakeというパンの通販サイトの「ロスパン」という賞味期限切れが近いパンの詰め合わせボックスも買ってみました。全国にあるパン屋さんから選べるのですが、今回は、なるべく輸送の際のCO2が出ない場所にしたかったので、お隣の石川県のパン屋さんのロスパンを選択。後日、昔ながらの素朴で美味しいパンが、段ボールにぎっしり、冷凍の状態で宅配され、数日間、家族で楽しく食べました。福袋もrebakeも「箱を開けるまで何があるか分からない」というワクワク感と共に食事を楽しめたのが、とても良かったです。

パンの箱

同封された紙には、冷凍パンの温め方が、パンの種類別に書かれていました。

ピロシキなどのパン

届いた日のお昼にピロシキとデニッシュを食べ、幸せなランチタイムになりました。

身近なところでは、コンビニやスーパーの「見切り品」コーナーを利用するのも、食品ロスを防ぐために有効な対策です。私がよく買うのは鶏肉や豚肉。買った後すぐに冷凍し、活用しています。普段は、輸送の際にCO2がたくさん出るのが気になるので輸入肉は買わないのですが、食品ロスについては「ゴミになるよりはずっと良い」という考えから、輸入肉も積極的に買っています。何がサステナブルか迷うことも多いのですが、その迷いも含めて楽しもう、と心がけながら、日々、買い物をしています。

冒険気分で楽しみましょう!

もともと食べることも料理することも好きでしたが、いろんなサステナブルフードを試し始めたら、新たな発見が多く、毎日がより一層、楽しくなりました。それは、言うなれば「食をめぐる冒険」。これからも、新しいサステナブルフードにトライしながら、美味しく、楽しく、食の問題解決の方法を探っていきたいです。

こちらの記事も参考にどうぞ→「身体にやさしく、地球にもやさしく食を『買う』には?

Photo byBrooke Lark on Unsplash

 

このエントリーをはてなブックマークに追加